東南アジア
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ヒンドゥー教と仏教はゆるやかに共存していました

東南アジアのヒンドゥー教に関連した世界遺産

バリ島・ティルタ・ウンプル photo:世界遺産イェーイ!

東南アジアを代表する世界遺産の遺跡「アンコール・ワット」は、実はヒンドゥー教の寺院として作られたことをご存知ですか? 東南アジアと言えばタイのアユタヤなどのように仏教に関連した世界遺産が多いイメージが強いですが、ヒンドゥー教に関連した世界遺産もいくつかあります。今回の記事では、東南アジアにあるヒンドゥー教に関連した世界遺産を6件ご紹介!異なる宗教がゆるやかに共存してきた東南アジアの世界遺産について簡単にご紹介していきます。

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ヒンドゥー教を簡単に・・・

ヒンドゥー教は、キリスト教、イスラム教に続き世界で3番目に信者の多い宗教とされています。キリスト教などのように世界中に信者が多いわけではなく、主にインドやネパールなど一部の地域で信仰されている宗教です。インドの人口が多いために信者の数が大変多くなっています。

現在のインド周辺で紀元前におこったバラモン教と土着の宗教がまざりあって、ヒンドゥー教が確立されました。ヒンドゥー教は多神教の宗教なので、多くの神様が信仰を集めています。三大神として有名な神様は、世界を破壊する「シヴァ神」、世界を保つ「ヴィシュヌ神」、世界を作る「ブラフマー神」です。

インドネシアのプランバナン寺院にあるシヴァ像 photo:世界遺産イェーイ!

三大神はそれぞれ聖なる動物に乗っています。シヴァはナンディ(牡牛)、ヴィシュヌはガルーダ(神鳥)、ブラフマーはハンサ(白鳥)に乗り、それぞれの乗り物も神様として祀られています。シヴァの乗り物がナンディ(牡牛)であるため、ヒンドゥー教徒の方は牛肉を食べません。

ナンディ像 photo:世界遺産イェーイ!

こちらはインドネシアのプランバナン寺院。シヴァが祀られているシヴァ堂の正面にある小さなお堂の中には、シヴァの乗り物であるナンディの像が祀られています。

ヒンドゥー教は、海上交易を介してインドから東南アジアに伝わりました。現在のカンボジアで栄えたクメール王国や、ベトナムにおこったチャンパー王国は、ヒンドゥー教文化の影響を受けています。インドネシアにもヒンドゥー教は伝わり、プランバナンを作ったマタラム王国はヒンドゥー教を信仰していました。またバリ島では、ヒンドゥー教とバリ土着の文化が混合したバリ・ヒンドゥー教が今も信仰されています。

タマン・アユン寺院 photo:世界遺産イェーイ!

東南アジアで現在インドネシアのバリ島以外でヒンドゥー教を信仰される方は少なくなっていますが、ヒンドゥー教文化の影響を受けた数々の遺跡は残されているのです。

アンコール遺跡群 クバル・スピアンに横たわるヴィシュヌ像 photo:世界遺産イェーイ!

 

アンコールの遺跡群:カンボジア

アンコール・ワット 朝日 photo:世界遺産イェーイ!

9世紀からカンボジア周辺を支配していたクメール王朝の歴代の王たちは、ヒンドゥー教を信仰し、数々のヒンドゥー教寺院を建設しました。その最高傑作がスーリヤヴァルマン2世によるアンコール・ワットです。

アンコール・ワットの回廊のレリーフ(浮き彫り)には、ヒンドゥー教に関連した物語が多数掘られています。

乳海攪拌(にゅうかいかくはん) photo:世界遺産イェーイ!

ヒンドゥー教の天地創造神話を描いた「乳海攪拌」は、神々(デーヴァ群)と魔人(アスラ群)が協力して大蛇(ナーガ)の尾を綱引きのように引っ張ると、乳海の底から不老不死の妙薬(アムリタ)が湧き出てくるという神話です。こちらの写真はまさに引っ張っているところ。

バイヨン寺院 photo:世界遺産イェーイ!

その後に即位したクメール王朝全盛期時代の王、ジャヤヴァルマン7世は大乗仏教を信仰し多くの仏教寺院を建立しました。その1つがアンコール・トムの中にあるバイヨン寺院です。

このように時代によって信仰する宗教が変わったため、アンコール遺跡群にあるそれぞれの寺院は、長い年月で見るとヒンドゥー教と仏教で混在して使われていたようです。

ヒンドゥー教の寺院として建てられたアンコール・ワットも、仏教寺院として使われることになりました。

アンコールの遺跡群

登録年 1992年
登録基準 「人間がつくった傑作」、「文化交流」、「文明の証拠」、「建築技術」
アクセス 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約45分。その他タイのバンコク、ベトナムのハノイ、ホーチミン経由も可能

 

プレア・ヴィヘア寺院:カンボジア

photo:ひさほ ゆう

「プレア・ヴィヘア寺院」は、タイとカンボジアの間にあるダンレック山地の頂上、高さ約600mの崖の上に建てられたヒンドゥー教寺院。9世紀に建てられたヒンドゥー教のシヴァ神を祀る祠堂を、11世紀~12世紀頃スーリヤヴァルマン1世と2世が改築し王家の寺院としたものです。

スーリヤヴァルマン2世はアンコール・ワットを建設した王。プレア・ヴィヘア周辺は、当時ヒンドゥー教の聖地として栄えていました。その後仏教が信仰されるようになるとプレア・ヴィヘアは仏教寺院として使われるようになります。

プレア・ヴィヘア寺院

登録年 2008年
登録基準 「人間がつくった傑作」
アクセス 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約1時間。シェムリアップから車で約4時間

 

チャムパーサックの文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺跡群:ラオス

最盛期にはインドシナ半島のほとんどを支配していたクメール王朝。そのため、カンボジアのみならずラオスなどにも美しいクメール遺跡が残されています。

ワット・プー 南北宮殿 photo:ひさほ ゆう

ラオス南部チャムパーサック平原に佇む寺院「ワット・プー」。このあたり一帯もクメール王朝の支配下にあったと言われています。クメール人たちはカオ山を神の宿る地として信仰していたため「山寺」を意味するワット・プーを建てました。

現在は敬虔な仏教徒が多いラオスですが、かつてヒンドゥー教が信仰されていた時代があったことを示す貴重な世界遺産です。

チャムパーサックの文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺跡群

登録年 2001年
登録基準 「文明の証拠」、「建築技術」、「出来事や宗教、芸術」
アクセス 日本からタイのバンコクまで飛行機で約6時間半。バンコクからルアン・パバンまで飛行機で約1時間半。ルアン・パバンからパークセーまで飛行機で約1時間40分。パークセーからワット・プーまで、車で約2時間

 

ミーソン聖域:ベトナム

photo:世界遺産イェーイ!

現在のベトナム中部で栄えたチャンパー王国のヒンドゥー遺跡。チャム人が興した海洋国家チャンパー王国は、貿易の拠点となったことから繁栄しました。海洋交易を通じてインドからチャンパー王国にヒンドゥー教が伝わり、4世紀頃にはヒンドゥー教を厚く信仰したバードラヴァルマン1世によって、シヴァ神の神殿など数々の宗教施設が建てられました。これが「ミーソン聖域」です。

クメール王朝が栄えるずっと昔に、ベトナムでヒンドゥー教が信仰されていたのです。ベトナムでは珍しいヒンドゥー教の遺跡は、鬱蒼としたジャングルの中にあります。

ミーソン聖域

登録年 1999年
登録基準 「文化交流」、「文明の証拠」
アクセス 成田からダナンまで直行便で約5時間半。ダナンから車で約2時間。

 

プランバナンの寺院群:インドネシア

プランバナン寺院 photo:世界遺産イェーイ!

インドネシアのジャワ島にある世界遺産。「プランバナンの寺院群」という世界遺産名称の通りいくつかの寺院が1つの世界遺産として登録されています。メインとなる「プランバナン寺院」はヒンドゥー教寺院ですが、すぐ近くにある「セウ寺院」は仏教寺院であるなど、ヒンドゥー教寺院と仏教寺院が混在しているのが特徴です。

仏教寺院のセウ寺院 photo:世界遺産イェーイ!

ジャワ島は、古くから国際貿易などで発展しヒンドゥー教と仏教も、海を通じて伝来しました。ジャワ島北部は大乗仏教を信仰するシャイレンドラ朝に、そして南部はヒンドゥー教を信仰するマタラム朝によって統治されていました。ヒンドゥー教のプランバナン寺院はマタラム朝のピカタン王によって9世紀に建設されたと考えられています。

仏教王国シャイレンドラ朝と、ヒンドゥー教国マタラム朝は、王族同士の婚姻により縁戚関係にあったため、ヒンドゥー教寺院のすぐ近くに仏教寺院が建てられたようです。

プランバナン寺院にはヒンドゥー教の3大神「シヴァ」「ヴィシュヌ」「ブラフマー」が祀られています。

ブラフマー像 photo:世界遺産イェーイ!

またヒンドゥー教の神話のひとつ「ラーマーヤナ」のレリーフも精密に残されています。

ラーマーヤナ photo:世界遺産イェーイ!

プランバナン寺院は、ヒンドゥー教寺院の特徴がとてもよく残されているので、ヒンドゥー教に興味のある方にぜひおすすめしたい寺院の1つです。

プランバナンの寺院群

登録年 1991年
登録基準 「人間がつくった傑作」、「建築技術」
アクセス 日本から首都ジャカルタ、またはバリ島のデンパサールまで直行便で約7時間。ジャカルタ、またはデンパサールからジョグジャカルタまで飛行機で約1時間。プランバナン寺院は、ジョグジャカルタから車で約45分。

 

バリの文化的景観:バリ・ヒンドゥー哲学トリ・ヒタ・カラナを表す水利システム「スバック」:インドネシア

最後にご紹介するのは、現在も多くの人々に信仰されているバリ・ヒンドゥー教の世界遺産です。

ウルン・ダヌ・バトゥール寺院 photo:世界遺産イェーイ!

ジャワ島に伝わったヒンドゥー教は信仰を集めましたが、その後イスラム教が入ってきたことにより、ジャワ島では主にイスラム教が信仰されるようになり、ヒンドゥー教を信仰する王国の貴族、僧侶、工芸士などがジャワ島からバリ島に移住しました。その後、バリ・ヒンドゥー教が盛んになります。

バリ・ヒンドゥー教とは、現在インドなどで信仰されているヒンドゥー教とは少し異なります。

バリ・ヒンドゥー教の哲学「トリ・ヒタ・カラナ」は、神と人、自然の調和を意味します。その概念に基づいて「スバック」という水を分け合うシステムが9世紀頃に作られました。世界遺産に登録されているのは「トリ・ヒタ・カラナ」に基づく棚田の景観や灌漑施設、水利システム「スバック」を司る寺院です。バリ・ヒンドゥー教では水は神様として祀られています。神格化された水を扱うので、寺院が管理したり宗教行事を行ったりしているのです。

ジャティルウィの棚田 photo:世界遺産イェーイ!

世界的に有名なビーチリゾートでもあるバリ島で、いまなお信仰されているバリ・ヒンドゥーの文化に触れる旅はいかがでしょうか?

バリの文化的景観:バリ・ヒンドゥー哲学トリ・ヒタ・カラナを表す水利システム「スバック」

登録年 2012年
登録基準 「文化交流」、「文明の証拠」、「伝統的集落」、「出来事や宗教、芸術」
アクセス 日本からバリ島のデンパサールまで直行便で約7時間。デンパサール空港からウブドまで車で約1時間。世界遺産は点在しているので、ウブドからツアーかタクシーチャーターが便利。

 
以上ヒンドゥー教に関連した世界遺産はいかがでしたでしょうか?本場のインドやネパールに比べると数は少ないですが、東南アジアにも想像以上に多くのヒンドゥー教の世界遺産が残されているのです。これらの世界遺産は、はるか昔、インドから東南アジアに海を渡ってヒンドゥー教が伝わってきたこと、また確かに東南アジアでヒンドゥー教が信仰されていたことを示しています。

(text : 鈴木かの子)

【連載】世界遺産のプロが教える! 東南アジア イェーイな旅

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