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見る人全てを感動させます!登録基準①

写真だけでも楽しめる!東南アジアの「人間がつくった傑作」な世界遺産5件

カンボジア:アンコール・トムのバイヨン寺院 photo:世界遺産イェーイ!

世界遺産には、誰もが納得するような価値を示すために10項目の登録基準があります。この登録基準のどれか1つ以上が認められれば、世界遺産に登録することができるのです。今回の記事では、登録基準①「人類の創造的資質を示す遺産」に注目!見た人全てが「これは素晴らしい!」と思うような、写真を眺めているだけでも楽しめるような、そんな登録基準①が認められている東南アジアの5つの世界遺産をご紹介します。

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世界遺産を証明する10項目の登録基準

登録基準を見ると、その世界遺産がどんな価値を持っているのか?というのを理解することができます。登録基準①~⑥が認められたものが文化遺産、⑦~⑩が認められたものが自然遺産、両方が認められているものが複合遺産です。

「顕著な普遍的価値」を証明する10の登録基準

登録基準① : 「人間がつくった傑作」

人間がつくり上げた素晴らしい傑作である遺産に認められる。

登録基準② : 「文化交流」

さまざまな国や地域の間で文化交流が行われてきたことを示す遺産に認められる。交易路や文化・文明の接する場所などにある遺産など

登録基準③ : 「文明の証拠」

文明や特徴的な時代が存在していたことを証明する遺産に認められる。

登録基準④ : 「建築・科学技術」

建築技術や科学技術の発展を伝える遺産に認められる。

登録基準⑤ : 「伝統的集落」

それぞれの文化や気候風土に合った伝統的集落が残っている遺産に認められる。

登録基準⑥ : 「出来事や宗教、芸術」

歴史上の重要な出来事や宗教、芸術などと関係する遺産に認められる。

登録基準⑦ : 「自然の景観美」

美しい自然景観や独特な自然現象が見られる遺産に認められる。

登録基準⑧ : 「地球の歴史」

地球の歴史を伝える遺産に認められる。

登録基準⑨ : 「固有の生態系」

それぞれの環境に合った動植物の進化の過程や固有の生態系を示す遺産に認められる。ガラパゴス諸島など。

登録基準⑩ : 「絶滅危惧種」

絶滅危惧種が生息する地域や生物多様性を示す遺産に認められる。

(参考文献:『はじめて学ぶ世界遺産50世界遺産検定4級公式テキスト』より)

 

登録基準① 「人間がつくった傑作」

登録基準を勉強すると世界遺産の理解が深まるのは間違いないのですが、最初から10項目全て覚えて「えーっと、この世界遺産の登録基準は①③④だから、傑作で、〇〇文明を証明していて、建築技術も伝えている・・・」となると、少々ややこしいので、まずは一番わかりやすい登録基準①を押さえてみてはいかがでしょうか。

今回の記事で取り上げる登録基準①は、人間が作り上げた素晴らしい傑作である遺産で、いわゆる有名な観光地で多く認められています。日本の世界遺産で登録基準①が認められているのは、姫路城や厳島神社、日光の社寺など教科書にも出てくるような観光地。国内はもちろん海外からも大勢の観光客が訪れるような世界遺産です。


類まれな美しさを誇る姫路城 photo:世界遺産イェーイ!

 

アンコールの遺跡群:カンボジア


アンコール・ワット photo:世界遺産イェーイ!

それでは登録基準①が認められている世界遺産をご紹介していきます。最初にご紹介する「アンコールの遺跡群」は、9~15世紀にインドシナ半島全域を支配していたクメール王朝が残した多くの遺跡。東南アジア全域に影響を与えたクメール美術を現代に伝える、まさに傑作です。600以上の石造りの遺跡が世界遺産に登録されていますが、その集大成とも言えるのが、アンコール遺跡最大の寺院「アンコール・ワット」です。


美しさが際立つ朝焼けの瞬間 photo:世界遺産イェーイ!

アンコール・トムの中心寺院「バイヨン寺院」も高い芸術性を持つ寺院のひとつです。12世紀末に作られたアンコール・トムは、ジャヤヴァルマン7世によって築城されたクメール王国最盛期を代表する建造物。


中心に高くそびえるピラミッド型の仏塔は須弥山を表す photo:世界遺産イェーイ!

バイヨン寺院の中に入り、中央祠堂のある上部テラスに出ると、巨大な顔、顔、顔!約2mある仏像の顔は、見る人すべてを圧倒します。


四面仏塔 photo:世界遺産イェーイ!

 
もう1つアンコール遺跡群でご紹介したいのが、そのあまりの美しさから盗まれそうになった女神像がある寺院「バンテアイ・スレイ」。


東洋のモナリザと呼ばれる photo:世界遺産イェーイ!

10世紀後半に作られた小さな寺院ですが、紅色砂岩で作られているためアンコール・ワットなどと違って赤みを帯びているのと、びっしりと彫られた細密なレリーフが特徴。こちらの写真は東洋のモナリザと呼ばれているデヴァター像です。1923年にフランス人作家のアンドレ・マルローが、このデヴァター像に魅せられて盗み出そうとしたとか。そんな逸話も残る美しき像です。


中心がラクシュミー photo:世界遺産イェーイ!

こちらはヴィシュヌ神の妻ラクシュミーが、象の聖水で清めているレリーフ。下にはナーガ(大蛇)とガルーダ(神鳥)の姿も。バンテアイ・スレイはヒンドゥー教の寺院です。

 

アンコールの遺跡群

登録 1992年
登録基準 「①人間がつくった傑作」、「②文化交流」、「③文明の証拠」、「④建築・科学技術」
アクセス 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約1時間

 

プレア・ビヒア寺院:カンボジア


photo:世界遺産イェーイ!

アンコール遺跡があるシェムリアップから車で走ること約4時間。タイとの国境沿いにクメール美術の傑作と呼ばれる寺院「プレア・ビヒア」があります。ダンレック山地の頂上、約547mの崖の上に建てられたヒンドゥー教の寺院です。


第二塔門 乳海撹拌のレリーフ photo:世界遺産イェーイ!

9世紀に創建され、11世紀~12世紀頃、アンコール・ワットを建設したスーリヤヴァルマン2世らによって改築され王家の寺院となりました。5つの塔門が800mに渡って一直前上に配置されているのが特徴。シンプルな構造美を誇る第一塔門は、カンボジアの2000リエル紙幣に描かれています。


photo:世界遺産イェーイ!

カンボジアとタイとの領有権問題で緊張状態が続いていたプレア・ビヒア。実は、登録基準「①人間がつくった傑作」「③文明の証拠」「④建築・科学技術」 この3つの登録基準で登録しようとしていました。しかし、カンボジア側の領土だけで登録基準③④の価値を認めるのは難しいということで、登録基準①のみで登録された経緯があります。


山頂からカンボジアの大地を見下ろす photo:ひさほゆう

プレア・ヴィヘア寺院

登録 1992年
登録基準 「①人間がつくった傑作」
アクセス 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約1時間。シェムリアップから車で約4時間

 

ボロブドゥールの仏教寺院群:インドネシア


photo:世界遺産イェーイ!

8世紀から9世紀にかけて造られた大乗仏教の巨大な寺院。1871年に発見されるまで約1000年もの間ジャングルの中に眠り続けていたミステリアスな遺跡でもあります。


外観 photo:世界遺産イェーイ!

最大の特徴は、他の仏教寺院のように中に入る空間がないこと。内部に空間を持たない寺院というのは、他に類を見ないものです。


敷地内のマノハラ・ホテルにある模型 photo:世界遺産イェーイ!

ピラミッド状の寺院の下から基壇、方形壇、円形壇の3層に分かれるボロブドゥールは、大乗仏教の宇宙観である3種類の世界「三界」を表しているとされます。


奥に見えるのがムラピ山 photo:世界遺産イェーイ!

回廊を上がっていくと、ムラピ山を見ることができます。このムラピ山の噴火によって、ボロブドゥールが火山灰に埋もれてしまったという説も。山と寺院との景観も見事です。

 

ボロブドゥールの仏教寺院群

登録 1991年
登録基準 「①人間がつくった傑作」、「②文化交流」、「⑥出来事や宗教、芸術」
アクセス 日本から首都ジャカルタ、またはバリ島のデンパサールまで直行便で約7時間。ジャカルタ、またはデンパサールからジョグジャカルタまで飛行機で約1時間。ジョグジャカルタからバスで約1時間半

 

プランバナンの寺院群:インドネシア


プランバナン寺院 photo:ひさほゆう

プランバナンの寺院群ということで、5つの寺院が世界遺産に登録されています。その中心的存在が、9世紀にマタラム王国のピカタン王によって建てられたヒンドゥー教のプランバナン寺院。インドネシアにあるヒンドゥー教の遺跡としては最大規模の寺院です。


シヴァ堂 photo:世界遺産イェーイ!

中央にそびえ立つのが高さ約47mのシヴァ堂。想像と破壊の神シヴァを祀っており、この地でシヴァ神への信仰が厚かったことが伺えます。


シヴァ堂の中にはシヴァ神の像 photo:世界遺産イェーイ!

またシヴァ堂の正面の小さなお堂の中には、シヴァの乗り物である聖牛ナンディの像が納められています。

 

プランバナンの寺院群

登録 1991年
登録基準 「①人間がつくった傑作」、「④建築・科学技術」
アクセス 日本から首都ジャカルタ、またはバリ島のデンパサールまで直行便で約7時間。ジャカルタ、またはデンパサールからジョグジャカルタまで飛行機で約1時間。プランバナン寺院は、ジョグジャカルタから車で約45分

 

スコータイと周辺の歴史地区:タイ

13世紀前半、クメール族に代わって力をつけてきたタイ族が、初めての統一王朝を建国。都は「幸福の夜明け」を意味する「スコータイ」と名付けられました。そのスコータイ朝の遺跡が、世界遺産に登録されています。


ワット・トラパン・ングンの遊行(ゆぎょう)仏 photo:世界遺産イェーイ!

世界遺産「スコータイと周辺の歴史地区」は、タイ族によって初めて作られた、タイ独特の建築様式の傑作であるということで、登録基準①が認められています。メインの「スコータイ」、そして少し郊外にある「シー・サッチャーナライ」と「カンペーン・ペット」この3つの都市遺跡が世界遺産として登録されています。

メインの「スコータイ遺跡公園」だけでも約70平方kmとびっくりするくらい巨大なんです。

photo:世界遺産イェーイ!

こちらは、スコータイ最大の寺院「ワット・マハータート」。城壁の真ん中にある最も重要な寺院です。増築を繰り返したので作りが複雑なのが特徴。広大な境内には200以上の大小の仏塔が並んでいます。もともとは屋根があったのですが、現在は石の柱と仏像だけが残されています。


photo:ひさほゆう

スコータイから北へバスで約1時間20分のところにあるシー・サッチャーナライ。スコータイ朝時代には、スコータイに次いで第2の都市として発展したところでもあり、現在も14の寺院が残っています。こちらの写真は「ワット・プラ・シー・ラタナー・マハータート」。クメール式のトウモロコシのような塔が特徴です。

 

スコータイと周辺の歴史地区

登録 1991年
登録基準 「①人間がつくった傑作」、「③文明の証拠」
アクセス 日本からバンコクまで直行便で約6時間。バンコクからスコータイまで飛行機で約1時間半

 
以上、東南アジアで登録基準①が認められている5つの世界遺産をご紹介しました。東南アジアで世界遺産を見たい!と思ったら、ぜひこの5件を選択肢に入れて下さい。登録基準①が認められている世界遺産はどれも有名で見応えがあるものばかり。写真や動画を見るだけでも、十分楽しめるので空想トリップにもおすすめです。

(text : 鈴木かの子)

【連載】世界遺産のプロが教える! アジア イェーイな旅

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