カンボジア
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巨大なクメールの微笑みに圧倒されます!

悠久のアンコール遺跡 アンコール・トムで行くべき7つのスポット

四面仏塔 photo:世界遺産イェーイ!

カンボジアの世界遺産「アンコールの遺跡群」の中でも、アンコール・ワットに次ぐ人気の観光地「アンコール・トム」。アンコール・トムといえば「クメールの微笑み」として知られる四面仏塔でおなじみですね。

実はアンコール・トムは「巨大な都市」という意味で、たくさんの遺跡から構成されています。50基以上の四面仏塔を有する仏教寺院「バイヨン」はその一部で、アンコール・トムには、バイヨン以外にもたくさんの見所があります。今回の記事では、アンコール・トムで訪れたい7つのスポットについてご紹介します。

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アンコール・トム

まずは「アンコール・トム」についてご紹介します。アンコール・トムは12世紀末、クメール王国最盛期に、ジャヤヴァルマン7世によって築城された都城。クメール語で「大きな都市」を意味します。その言葉通りアンコール・トムは、1辺が約3km高さ8mの城壁で囲まれ、その周囲には12kmもの環濠を有する、正方形の巨大な都市。城壁で囲まれているのは、この頃隣のチャンパー王国から攻撃を受けることがあったからです。

この正方形の敷地の中にたくさんの遺跡が点在しており、都の中心に建てられているのが仏教寺院「バイヨン」なのです。


バイヨン photo:世界遺産イェーイ!

アンコール・トムは宗教的な宇宙観をもとに作られており、中心に高くそびえるピラミッド型のバイヨンは須弥山、城壁はヒマラヤの霊峰連山、環濠は大海を表しています。

それではアンコール・トムで訪れたい7つのスポットをご紹介していきます!

 

1.  南大門

アンコール・トムの入り口としては東西南北に城門があり(東に2つ)、アンコール・ワット方向からは「南大門」から入ることになります。アンコール・ワットの後にアンコール・トムを観光される方が多いと思うのですが、アンコール・ワットからこの南大門まではトゥクトゥクで5分くらいです。


photo:世界遺産イェーイ!

トゥクトゥクが渋滞しているなと思って外を見てみると、ナーガ(大蛇)を抱きかかえる神々の像が見えてきました。門の前にはお堀があって、そこには橋がかかっています。その橋の欄干には「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」というヒンドゥー教の神話が彫刻で描かれています。

「乳海攪拌」とは、神々と魔人が協力して大蛇の尾を綱引きのように引っ張り、乳海の底から不老不死の妙薬(アムリタ)を湧き出させるというお話です。白っぽい像はレプリカで、灰色の像は建設当時のもの。さらに進むと南大門が現れてきます。


photo:世界遺産イェーイ!

こちらが南大門。高さは23mなのでかなり大きいです。城門の上には4方向に巨大な顔が!これから入場するアンコール・トムに期待が高まる瞬間です。ちなみに筆者は、アンコール・トムはトゥクトゥクで観光しました。アンコール・トムやアンコール・ワットなどシェムリアップ市内から近い遺跡を観光する時はトゥクトゥクが便利です。

門を抜けてまっすぐすすむと、いよいよバイヨンが見えてきます!

 

2. バイヨン


象にも乗れます photo:世界遺産イェーイ!

バイヨンは、南大門にもあった巨大な四面仏塔が50基以上もあることで有名な仏教寺院で、それらは「クメールの微笑み」と讃えられています。この顔は観世音菩薩を彫ったとされますが、ブラフマー神説やシヴァ神説など諸説あります。

バイヨンも正方形の形をしており、主に第1回廊、第2回廊、中央祠堂で構成されています。入り口から中心にそびえ立つ中央祠堂まで建物を登って進んでいきます。


photo:世界遺産イェーイ!

第一回廊は東西160m、南北140m。ぐるっとまわりながら見ていきたいのがレリーフ(浮き彫り)。高さ10mの壁面にチャンパー王国とクメール王国の戦いの様子や、暮らしぶりが生き生きと描かれています。


兵隊の行進 photo:世界遺産イェーイ!

第二回廊は東西80m、南北70m。こちらにもレリーフがあり、ヒンドゥー教の神話などがあります。バイヨンは12世紀末から13世紀にかけてジャヤヴァルマン7世など3人の国王によって造られました。もともとは仏教寺院として建てられましたが、13世紀後半ジャヤヴァルマン8世の時代に改宗されヒンドゥー教寺院となりました。第二回廊のレリーフはヒンドゥー教寺院の時代に描かれたものなのです。


photo:世界遺産イェーイ!

そしてこのような険しい階段を登っていくと、中央祠堂のある上部テラスに出ることができます。アンコール遺跡全般に言えることですが、歩きやすい靴がマストです!


photo:世界遺産イェーイ!

仏像の顔が3つ見えるポイントは、人気の写真スポット。上部テラスは自由に歩き回ることができ、四面仏塔の中にも入ることができます。顔の長さは約2m。近くで見ると迫力満点です!


photo:世界遺産イェーイ!

こちらは中央祠堂。入り口が4箇所で八角形の構造になっています。中央祠堂の中は薄暗く、参拝客も訪れ現在でも厚く信仰を集めていることが伺えます。

口角をあげて微笑みを浮かべている顔や、唇が分厚い顔など、いろいろな顔を見ることができます。上部テラスを歩きながら、四面仏塔の顔をひとつひとつ、じっくりと見てみるのも楽しいひとときです。人気スポットなので、観光客が少ない午前中が狙い目です。

 

3. バプーオン


ピラミッド型の寺院 photo:世界遺産イェーイ!

バプーオンは三層回廊のヒンドゥー教寺院で、バイヨンの北東200メートルのところに建てられています。11世紀中ごろにウダヤディティヤヴァルマン2世によって造られました。


photo:世界遺産イェーイ!

手前に見える道は「空中参道」と呼ばれており、正面入口へと続いています。高さ約1mで長さが約200mの参道は、建設当時は白い漆喰が表面に塗られていました。両側の池の水が増えると、まるで参道が浮かんでいるように見えたそうです。

ちなみにバプーオンとは「隠し子」を意味します。これは、王妃が自分の子供が暗殺されないようにするために、この寺院に子供を隠したという伝説に由来します。

 

4.  王宮(ピミアナカス、池、東塔門)

バプーオンから、こちらの門をくぐって王宮へすすみます。


photo:世界遺産イェーイ!

東西約600m、南北約300m高さ5mの周壁で囲まれている王宮。王宮と書いていますが、王宮そのものは既にありません。現在は周壁と寺院「ピミアナカス」そしていくつかの池と門が残っているのみです。


ピミアナカス photo:世界遺産イェーイ!

ピミアナカスは小さなピラミッド型寺院で10世紀末にジャヤヴァルマン5世によって建てられました。王宮内にある王族専用の寺院で「天上の宮殿」という意味です。ピミアナカスのすぐ近くには、宮廷の人々の沐浴場、巨大なプールのような池があります。


photo:世界遺産イェーイ!

王宮から象のテラスへ向かう途中に、王宮の塔門(東楼門)があります。この門を抜けると象のテラスに入ります。


photo:世界遺産イェーイ!

 

5. 象のテラス


象のレリーフ photo:世界遺産イェーイ!

王が臨席し、儀式や式典が行われていたとされるテラスで、壁にたくさんの象の彫刻があることから、象のテラスと呼ばれています。12世紀末にジャヤヴァルマン7世によって建てられました。


ガルーダのレリーフ photo:世界遺産イェーイ!

長さ約350m高さ約4mの石造りのテラスで、南北のテラスの壁面にはゾウ、中央テラス壁面にはガルーダ(神鳥)などのレリーフが残されています。


東側の階段 シンハ像とテラスを支えるガルーダ photo:世界遺産イェーイ!

 

6. ライ王のテラス


photo:世界遺産イェーイ!

象のテラスのお隣にある「ライ王のテラス」。この写真は象のテラスから見たライ王のテラスです。

ライ王のテラスは、12世紀末にジャヤヴァルマン7世によって建てられました。壁の高さは6m。内部は迷路のような複雑な構造になっています。


photo:世界遺産イェーイ!

必見ポイントは細密なレリーフの数々。1910年頃まで土砂に埋もれていたため保存状態が良いのが特徴です。


photo:世界遺産イェーイ!

下の方には9つの頭を持つナーガ(大蛇)が描かれています。神々のレリーフも美しく残されています。


photo:世界遺産イェーイ!

テラスの上には名前の由来となった「ライ病を患った王」の坐像があります。三島由紀夫の戯曲「癩王のテラス」は、彼がこの坐像を見たときに着想を得たもの。訪れる前に一読してみてはいかがでしょうか?なお、この坐像はレプリカで、本物はプノンペンの国立博物館にあります。また最近の研究ではこの坐像は「閻魔(えんま)大王」ではないかと考えられています。

 

7. 勝利の門


photo:世界遺産イェーイ!

兵士が隣国との戦いに勝って帰って来るときに、この門をくぐったと言われる勝利の門。南大門と同じく四面仏塔があります。

こちらの勝利の門を出て、次の遺跡へと向かいましょう!

以上、アンコール・トムで訪れたい7つのスポットをご紹介してきました。

門(南大門、勝利の門)以外のスポットは徒歩でまわることができます。門と遺跡は少し距離があるのでトゥクトゥクや車を利用するほうが良いでしょう。ご紹介した全ての遺跡をじっくりまわると半日程度かかるので、滞在日数が少ない方はバイヨンや象のテラスなどにしぼって観光してみるのもおすすめです。

アンコールの遺跡群

登録 1992年
登録基準 「人間がつくった傑作」、「文化交流」、「文明の証拠」、「建築技術」
アクセス 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約1時間

(text : 鈴木かの子)

【連載】世界遺産のプロが教える! アジア イェーイな旅

 

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