カンボジア
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神秘的な遺跡をのんびりと

悠久のアンコール遺跡 大回りコースで行くべき7つの寺院

プリア・カン photo:世界遺産イェーイ!

カンボジアの世界遺産「アンコールの遺跡群」を構成する遺跡は600以上。壮大な遺跡を効率よくまわるために「小回りコース」と「大回りコース」という、定番コースがフランス植民地時代に開発されました。小回りコースをご紹介した記事に続いて、今回の記事では、クメール王朝後期の遺跡が多い大回りコースで訪れたい7つの寺院をご紹介します。

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大回りコースも、小回りコースと同様に起点となるのはアンコール・トム。小回りコースよりも少し北東部にある遺跡を回り、所要時間は4時間程度です。スタート地点のアンコール・トムはジャヤヴァルマン7世が建てた都城。四面仏塔で知られるバイヨン寺院は、アンコール・トムの中心寺院です。


バイヨン寺院 photo:世界遺産イェーイ!

それでは大回りコースで訪れたい7つの寺院を、ルートに沿ってご紹介していきます。

 

1.  プリア・カン

アンコール・トムの北門を抜けて、大回りコースをスタート!


アンコール・トム 北門 photo:世界遺産イェーイ!

林道を進んで行くと、すぐに大回りコースで最初の遺跡「プリア・カン」に到着します。「聖なる剣」を意味するプリア・カンは、12世紀後半、ジャヤヴァルマン7世が亡父を弔うために建てた巨大な寺院。ジャヤヴァルマン7世は、アンコール・トムを建てたことでも知られるクメール王朝を代表する王です。ちなみに巨木が遺跡にからみついた景観が印象的な「タ・プローム」は、ジャヤヴァルマン7世が亡母を弔うために建てたものです。


ガルーダ photo:世界遺産イェーイ!

アンコール・トムから行くと西門から入場することになります。砂岩彫刻が並ぶ参道を抜けると、西の壁に神鳥ガルーダを見ることができます。


photo:世界遺産イェーイ!

門を抜けてさらに木々に囲まれた道を進み内部へ。プリア・カンには、巨大な外周壁と二重の回廊があります。


photo:世界遺産イェーイ!

中央祠堂近くにある3つの穴をもつリンガ台。ヒンドゥー教の神ヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーを祀っているとされます。


photo:世界遺産イェーイ!

ストゥーパが安置されている中央祠堂を抜け踊り子のテラスへ。柱に13人のアプサラ(天女)のレリーフが残されています。保存状態の良い繊細なアプサラは必見!


photo:世界遺産イェーイ!

東塔門の裏側にも美しいレリーフが彫られています。そして東塔門を抜けてから、振り返って見ていただきたいのがこちらの奥にある建物。


photo:世界遺産イェーイ!

2層構造になっていて、1階は円柱ですが、2階は角柱。ギリシャ神殿のような円柱はクメール遺跡では珍しいもので、図書館として使われていたとされます。

この寺院の辺り一帯は、チャンパ王国との激戦の地でした。プリア・カンは、ジャヤヴァルマン7世がチャンパ軍との戦いに勝ったことを記念して建てたとされます。東西800m、南北700mの巨大な寺院は、仏教を学ぶ場としても機能していたようで、僧侶など数多くの人々が暮らしていました。プリア・カンは、見どころ満載なので、時間をとって観光して欲しい遺跡です。

 

2.  ニャック・ポアン


雨季は水がたっぷり photo:世界遺産イェーイ!

大回りコースで2つ目にご紹介する「ニャック・ポアン」は、池に浮かぶ丸い形の寺院で、プリア・カンと同じくジャヤヴァルマン7世によって建てられたもの。プリア・カンからは車で5分ほどです。ニャック・ポアンは、他の遺跡とは少し毛色が違います。プリア・カンの貯水池とされる四角形の池の中に、円形の中央祠堂が建っており、その周りを囲むように4つの四角形の小池があります。


左:ナーガ 右:神馬ヴァラーハ photo:世界遺産イェーイ!

ニャック・ポアンとは「絡み合う蛇」という意味で、中央祠堂の基壇に2匹のナーガ(大蛇)が巻き付いています。2匹の蛇と向かい合っているのは観世音菩薩の化身でもある神馬ヴァラーハ。良く見ると神馬ヴァラーハに人がしがみついています。これは、鬼が住む島にたどりついてしまった旅人たちが、神馬ヴァラーハに乗って逃げ出したというヴァラーハ伝説をあらわしています。


象の口から水が出る photo:世界遺産イェーイ!

中央の池と4つの小池をつなぐ水路には象、人間、馬、獅子の頭の形をした石像があり、口から水が流れる仕組みになっています。雨季には水が多いですが、乾季は水が涸れていることもあります。

 

3.  クロル・コー


photo:世界遺産イェーイ!

ニャック・ポアンの斜め向かいにある、大回りコース3つ目の寺院「クロル・コー」。こちらもジャヤヴァルマン7世によって建てられたもの。


photo:世界遺産イェーイ!

砂岩でつくられた中央祠堂には、美しいデヴァター像(女神像)のレリーフが残されています。

誰も来ないような森林の中にひっそりと眠っている遺跡。ニャック・ポアンから歩いてすぐなので、神秘的な世界をのぞいてみるのはいかが?

 

4. タ・ソム


東西に四面仏塔がある photo:世界遺産イェーイ!

ニャック・ポアンから車で約3分の「タ・ソム」は、ジャヤヴァルマン7世が僧院として建てたものです。西塔門から入るとバイヨン寺院でもおなじみの四面仏塔が出迎えてくれます。


photo:世界遺産イェーイ!

タ・ソムの特徴は、ちょっとめずらしいデヴァター像(女神像)を見られること。こちらは西門の壁に彫られた、髪の毛をしぼるような仕草をするデヴァター像。クメール遺跡ではおなじみのデヴァター像ですが、こういった仕草をするものは珍しいです。


photo:世界遺産イェーイ!

タ・ソムでの必見ポイントは、リエップという木の根に覆い尽くされた東塔門。遺跡と巨木のナイスなコラボレーションも、アンコール遺跡の醍醐味のひとつです。

 

5. 東メボン


photo:世界遺産イェーイ!

「東メボン」は、巨大な貯水池(今は干上がってる)「東バライ」の中央に建てられたピラミッド型の寺院です。東メボンは池の上にあったということをイメージしながら散策してみましょう。


photo:世界遺産イェーイ!

遺跡は、二重の周壁で囲まれており、その四隅には巨大な象の彫刻が置かれています。最上壇の真ん中には中央祠堂、四隅には4つの祠堂があります。東メボンはクメール時代初期10世紀に建てられた遺跡です。ジャヤヴァルマン7世が12世紀末のクメール時代後期に建てた「プリア・カン」などと比べるとシンプルな作りになっているのが特徴。大回りコースでは、東メボンとプレ・ループがクメール時代初期の遺跡です。


photo:世界遺産イェーイ!

祠堂の入り口の上部には、ヒンドゥー教の神話がレリーフで描かれています。こちらは、れんがの壁面に漆喰を塗って文様をつけているもので、クメール時代初期の建築物に用いられている手法。たくさんの穴が空いていますが、この穴は漆喰を、はがれにくくするために空けたと考えられています。漆喰がはがれやすいことから、この手法はあまり用いられないようになり、クメール時代後期には、彫刻が砂岩に直接彫られるようになっていきます。

 

6. バンテアイ・サムレ


photo:世界遺産イェーイ!

「バンテアイ・サムレ」とは「サムレ族の砦」を意味します。アンコール・ワットを建てたスールヤヴァルマン2世によって建設されたとされ、祠堂が回廊で結ばれているなど、アンコール・ワットと造りが似ているのが特徴です。


photo:世界遺産イェーイ!

「砦」という名前の通り、外回廊には窓がなく閉鎖的な構造になっています。塀は一番高いところで約6mもあります。


photo:世界遺産イェーイ!

破風に深く彫られたレリーフは、ヒンドゥー教の神話を描いています。


photo:世界遺産イェーイ!

とてもめずらしいのが、屋根の上にあるろうそくのような飾り。他の遺跡ではあまり見られないスタイルです。


photo:世界遺産イェーイ!

回廊の側柱に残された緻密なレリーフも必見です。バンテアイ・サムレへのアクセスは、東メボンから車で約5分。大回りコースの中では一番東にあるので、バンテアイ・スレイなど郊外の遺跡とセットで訪れるのもおすすめです。

 

7. プレ・ループ


photo:世界遺産イェーイ!

最後にご紹介する「プレ・ループ」は、東メボンと同時期のクメール時代初期10世紀に造られたピラミッド寺院。二重の周壁の中に中央祠堂と4つの祠堂があり、東メボンよりも規模が大きいです。


photo:世界遺産イェーイ!

プレ・ループとは「体の変化」という意味で、火葬が行われていたことに由来するそうです。写真中央に見えるのが火葬に使われていた石槽です。


photo:世界遺産イェーイ!

実はプレ・ループは夕陽スポットとしても有名な場所。中央祠堂をからの見晴らしは最高なので、夕陽の時間を狙って訪れ、絶景を眺めながら大回りコースの最後を締めくくりましょう。

以上、大回りコースで訪れたい7つの寺院をご紹介してきました。ご紹介した順番と逆にまわってもOKです。ちなみに筆者は、バンテアイ・サムレを、郊外の遺跡(バンテアイ・スレイ、クバル・スピアン)とセットでまわりました。時間がない場合は興味のあるところにしぼってまわるのも良いでしょう。滞在日数に合わせてルートを決めて下さいね。

アンコールの遺跡群

登録 1992年
登録基準 「人間がつくった傑作」、「文化交流」、「文明の証拠」、「建築技術」
アクセス 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約1時間

(text : 鈴木かの子)

【連載】世界遺産のプロが教える! アジア イェーイな旅

 



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