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かつてイギリス植民地だったミャンマーは、紅茶文化圏。ここ10年ほどで豆から挽いたコーヒーを飲ませるカフェも増えてきましたが、庶民の社交場は今でも、甘い紅茶「ラペイエ」を出す「ラペイエサイン(「サイン」は「店」の意味)」です。
ラペイエサインはミャンマー文化の縮図。そのワケは本文で 著者撮影
そんなラペイエサインの楽しみ方を伝授します。
ラペイエサインは男性の社交場
ラペイエサインは最近こそ女性の姿が増えていますが、少し前までは女性一人、ないしは数人連れだったとしても女性だけのグループで席につくと、周囲の男性客から白い目で見られたものです。これは、イギリス植民地時代に地方やインドからヤンゴンに集められた労働者たちの社交場として、ラペイエサインが発展してきたからかもしれません。
今でも、ラペイエサインの多くは地上派では放送しないプレミアリーグのサッカー中継を放送するため、特にサッカーのある日は自宅にケーブルテレビを持たない層の男性たちで店内は沸き立ち、ちょっと女性が入りにくい雰囲気があります。
人気サッカーチームの中継日のため満席の賑わい 著者撮影
けれども外国人は別。どうもミャンマー男性にとっての「女性枠」には入っていないようで、気軽にお茶や雰囲気を楽しめます。
店のタイプは3種類
ラペイエサインには大きく分けて、次の3つのタイプがあります。
①路上店
路上にプラスチックの机と椅子を出して営業する簡易ラペイエサイン。このタイプでは、食べ物は揚げ物などの数種類のスナックしか扱っていないケースがほとんどで、袋入りの菓子パンがテーブルに並ぶ店もあります。
練炭などを使って路上で調理 著者撮影
②路面店
最もポピュラーなタイプで、道に面した壁がない店が主流です。スナック各種のほか、軽食も用意。たいていは店内でスポーツ中継を流しています。
写真は中華系のラペイエサイン。このタイプには飲茶があることも多い 著者撮影
③フードコーナー併設店
②との区別がつきにくいですが、普通の大衆食堂と変わらないほど料理の種類が豊富な店をここに分類してみました。昼食や夕食にも利用できます。
この手の店は写真付きメニューを壁に貼り出していることが多い 著者撮影
Let’s 注文!
さて、では注文方法をみていきましょう。
席に着くとまず運ばれてくるのは、中国茶の入ったポットとスナック類です。中国茶は飲み放題で、スナックは食べた分だけ最後に払うシステムです。
ミルクティはソーサーにこぼれるほどなみなみと入ってくる。中国茶はセルフサービスで 著者撮影
喫茶として利用するならまずは、甘いミルクティ「ラペイエ」を注文しましょう。ラペイエには入れる練乳やエバーミルクの量の違いで甘さに段階があり、注文するときはその段階名を告げるのが一般的。多くの店が5段階で用意しており、甘くない方から「チャーゼイッ」、「ポーゼイッ」、「ポンフマー」、「マコッ」、「チョーゼイッ」。日本人なら、最も甘くないチャーゼイッでもかなり甘く感じます。
これだけで合計10種類ですが、もっと多くの客のカスタマイズに応える店もあります。少しばかりややこしいですが、ミャンマーではこの注文方式を、スタバが誕生する何十年も前からやってきたことになります。
外国人向け高級ラペイエサインでは、16段階をイラスト入りメニューで説明 著者撮影
スナックに見るミャンマーの地理と歴史
たいていのラペイエサインのテーブルに出てくるサモサ 著者撮影
ラペイエサインで最初に運ばれてくるスナックには、店の特徴が出ます。最もポピュラーなのはサモサや揚げパン。ほかにも菓子パンや揚げ春巻き、月餅、パウンドケーキなどをよく見かけます。
これだけ並べられると、食べずにいるのは至難の技 著者撮影
お気づきでしょうか?
実はこれらはミャンマーの隣国である中国とインド、そして旧宗主国であるイギリスの食べ物なのです。ミャンマーが中印に挟まれ、かつ旧イギリス植民地あった歴史を感じさせる、奥行き深いラインナップなのです。
おすすめスナックはこちら
おすすめスナックはダックエンパナーダ。アヒルのミンチ肉が入ったパイ。スペイン系のスナックですが、起源はインドのサモサといわれているらしく、ミャンマーのものはインド由来だろうと推測しています。
著者撮影
次はパラータ。インドの主食のひとつで、全粒粉の生地をバターを塗りながら層を重ねるように焼いたもの。豆のペーストが入るとペーパラータ、卵だとチェッウーパラータとなります。個人的にはチェッウパラータとミルクティの組み合わせが一番好きです。
著者撮影
食事もとりたいなら
スナックだけでなく、もっとがっつり食べたいという人もいるでしょう。食事をおいている②や③タイプのラペイエサインを代表する料理を紹介します。
まずはペータミン。豆ご飯に目玉焼きを乗せた、定番朝ごはんのひとつです。ちなみに朝はほとんどラペイエサインが、モヒンガーやシャンカオスエといった麺料理も出しています。
著者撮影
次もインド料理、プーリー&カレー。成り立ちからインドの影響が強いラペイエサインでは、インド料理メニューが豊富です。
著者撮影
上でも書きましたが、ラペイエサインは中国の影響も大きく、飲茶がある店も多いです。私のおすすめはタミンバウンで、まさに中華丼。日本人には食べ慣れた味です。
著者撮影
最後は席で清算を
食べ終わったら清算してもらいましょう。ティーボーイに清算をお願いすると、札束をもってあちこち駆け回るマネージャーがやってきます。彼はテーブルに並ぶ皿や残ったスナックの数を見て、料金を言ってくれます。
たいていの店は、煮出した紅茶を茶こしでこすパフォーマンスが見られる 著者撮影
夜9時までには閉まってしまう飲食店が多いミャンマーですが、ラペイエサインは一般的に営業時間が長く、24時間営業もけっこうあります。夜中や早朝に町に着いてしまっても暖かいミルクティやスナックで腹ごしらえできる、旅人の強い味方なのです。
手軽にミャンマー文化にどっぷりひたれるラペイエサインを、ぜひ体験してみてください!
(text & photo : 板坂 真季)
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