ベトナム
カルチャー
好みの布を選んでオーダー!

オーダーメイドの国ベトナムで布からアオザイやシャツをつくる

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著者撮影

アオザイの国はオーダーメイドの国

ベトナムと言えばアオザイですよねー。
ネットでの「最も美しい民族衣装は?」という議論で毎度名前が挙がるベトナムの民族衣装・アオザイ。少し雑に言えば、露出を抑えたチャイナドレスという印象でしょうか。地面に届きそうなほど長くそして大きくスリットの入ったスカート、その下にはゆったりとしたズボン。この、ズボンの上とスリットの端が重なった、三角窓から見えるお腹がセクシーなんですよね。昔、ニーソックスの上端とスカートの間が「絶対領域」なんて呼ばれたりもしましたけど、アオザイの三角窓は「神の領域」と呼んでも言い過ぎではありません。神社の鳥居の向こう側みたいなもんですね。言い過ぎました。

 
アオザイのもうひとつの大きな特徴に、上半身に対してピタッ!と生地が密着して身体のラインがハッキリと見える点があります。ベトナム人女性に細身の方が多い理由はアオザイを着こなすためとも言われたり。そう、密着している…つまり、アオザイはオーダーメイドが前提にあるんですね。余談ですが、男性用もあってこちらは全く密着していません。まぁ、個人的には「密着して誰が得すんねん」と思いますが。いや、損得は関係ないか!

 

ベトナムと言えばアオザイ、アオザイと言えばオーダーメイド。

言い換えますと、ベトナムと言えばオーダーメイド!ということなんです!

しかーし、観光に来られた方にとってのアオザイの楽しみ方は限られています。
試着して写真撮影、試着して散歩、これが関の山でしょう。

 
が、私は言いました!

アオザイはオーダーメイドが前提にあると!

用意されたアオザイを着て何が真のアオザイストと呼べるのか!

そもそもアオザイストって何なんだ!

 
という訳で今回は、「布生地から選ぶアオザイの作り方」を紹介します。
それ以外にもTシャツやスーツやワンピースなんかもオーダーメイドれるんだぜベトナムは!

 

やって来ました、布生地の聖地・タンディン市場

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著者撮影

いきなりテイラーに行っても布生地はあるのですが、その数は限られてしまう訳です。でも、折角つくるなら、食傷するくらいの種類からあなたと運命の赤い糸でつながっている布生地を選んでやりましょうや。だからと言って赤い布生地を選んだらダメですよ。あはは、冗談がくだらねぇ。

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著者撮影

こちらがタンディン市場。外観では中に何があるか分かりませんが……ほい!

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著者撮影

布生地がギ~ッシリ!

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ほ~らほら!

この通り、ひしめき合うように布生地が積まれています。境目はよく分かりませんが、ほぼ等間隔で座っている人物(主に女性)が、各店の売り子です。あ、コレいいなぁーと思って布を見たり触ったりしていると「何が欲しいの?」と聞いてくるので、「こういうものを探していてかくかくしかじか…」とか返答しようものならそのままバトル(交渉)に突入です。

余談ですが、これらの布生地は韓国やカンボジアからの輸入品らしい。ベトナム製だと思っていたので、その事実を知ったときは少しだけ凹みました。全てがベトナム製だったらなんかカッコイイ、っていうだけのワガママですが。

 
さぁ、それではここで、価格交渉の方法を紹介しましょう。

 

私が実証しております!市場で値切る方法

向こうも電卓を持っているので、単純に指差しをしていればなんとなく売買が成立してしまうのですが、少しでもお得に買い物をしたいですよね。という訳で、価格交渉のノウハウをお教えいたしますよ。

 
1.値段を聞くときは指を差しながらバウニューティェン(Bao Nhieu Tien)?

これはもちろん「いくら?」という意味。出だしから「ハウマッチ?」と英語で聞いてしまうと、高く見積もまれてしまう可能性があります。観光客の多い市場に比べるとタンディン市場はかなり良心的な価格ですが、それでも現地の言葉を使うことによって、「むむっ、こやつ出来る…!」と思わせれば得をしても損はしません。ただ、当たり前のように価格もベトナム語で言ってくるので、こちらもGoogle先生に聞くなりして押さえておきましょう。途中で英語に切り替えても構いません、ここでは最初の言い値が肝心なのです。

 
2.相場は1メートルが5万ドン(およそ250円)~20万ドン(およそ1000円)

これは正直なところ「ものによる」のですが、それでも慣れていないと10倍の額を言われてもピンと来ないと思うので、おおよそこの範囲だと思ってください。で、ほとんどのお店で購入できる最小値が1メートル。価格を知って、その分野に詳しい方ならお気づきかもしれませんが、ベトナムではオーダーメイドこそ安いものの、布生地はそれほど安くありません。輸入品ですし、これはしょうがないのかもしれませんね。

 
3.値切りたかったら、ヒット&アウェイ

この市場ではまとめて(具体的にはおおよそ3メートル以上)購入しない限りあまり値切れないと思っておいた方が良いのですが、それでもあなたが値切りたい場合、一度値切ったあとに諦めた体でその場を離れてしまう方法が得策です。まだ価格を落とせる場合は売り子から呼び止めて来るし、本当に下がらない場合はスルーされます(そのときはしばらくしてからまた戻れば良い)。

ただ、繰り返しになりますが、タンディン市場は全体的に良心的な価格であることと、彼女たちも商売でやっているのでお互いに幸せになれる交渉になると良いですね。これを「ヒット&アウェイ」と呼べるかどうかは分かりませんが、ただ私が言いたかっただけです。蝶のように舞い蜂のように刺せ!と偉い人も言ってます。

 
上記が価格交渉の方法ですが、1も3も観光地の面を持つ市場であればどこでも通用します。とくに一大観光スポットのベンタイン市場では絶大な効力を発揮!3が三回くらい使えたりするので、一見すると底なしに下がっていく価格に対して「一体どんだけ利益貪っとんじゃ」という猜疑心が逆に生まれて来ます。まぁ、あそこは、市内屈指の土地の高さ(ひいては場所代の高さ)ではありますけどね……。

 

市場グルメもついでに楽しめます

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著者撮影

布生地とは全然関係ありませんが、

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市場内にあるワンタンメンが安くて美味しいですよ。

 

タンディン市場の向かいにも布生地が売られています

さて、価格交渉がどうのこうのと書いておきながら、市場では買わず、ハイバーチュン通りを挟んだ向かいに並ぶ生地屋さんで購入するのもありです。
タンディン市場に比べると、店員の声掛けも少ないので、比較的ゆっくりと物色できるはずです。

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市場と同様に、アオザイやスーツに使われる布生地を扱うお店が並んでいます。

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なんだかお金が掛かっていそうなお店を発見。

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アオザイのパンフレットなんてあるんだー、と見ていると!

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著者撮影

モニターの下に……何コレ!?

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ハローワークの窓口……ねぇよ!?

すごいですね、ハローワークで使われていたモニターがベトナムのアオザイ生地屋に移動するって、かつて目隠しされて香港まで連れて行かれた猿岩石を遥かに凌ぎます。このたとえ、すっごい分かりづらい!

 
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著者撮影

ギッシリとひしめく布生地たち。
アオザイ用だけあって、個性が強くて美しい。

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著者撮影

いいですねーあーいいですねー(布好きです)。

 
ここまで紹介しておいて、今回そもそもアオザイをつくって着る人間は誰なんだ?というともちろん私ではありません。男性用もあるけれど、女性用の華やかさには敵いませんしね、それもなんだか片手落ち。という訳で、ちょうど友人がアオザイを新調したいという話をしていたのでそこに同行することにしました。

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著者撮影

そんな友人が選んだ布生地がこちら!等間隔にあしらわれた小鳥が可愛いですね。
ゴージャスというよりも可愛らしいアオザイになりそうです。

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著者撮影

ちなみに私はいくつかTシャツをつくりたかったので、こちらの布生地を購入しました。

 

つくろう!アオザイ&Tシャツ

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著者撮影

それらを携えて、オーダーメイドショップ……いわゆるテイラーへ向かいます。

布生地を扱うお店ではそのままアオザイのオーダーメイドにも対応してくれる場合が多いのですが、友人いわく「ここは前回も利用したので安心」だそうです。ただ、言葉が通じない、かつ住み慣れていない方となると、修正の注文などで苦労すると思うので、日本人が対応してくれるお店が良いかもしれません。そちらはまた後ほど紹介します。

 
店の正面にはアオザイを着たマネキンが二体。

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著者撮影

 
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著者撮影

もうちょっと…生やしてあげても良かったのではないか。

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著者撮影

アオザイをつくるためには、なんと15箇所以上の部位を計測します。
この部位の多さこそが、あの美しいフォルムを生み出す秘密なんですね。

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著者撮影

このように、全身の計測値をカードに記します。
友人から個人情報ではないかと言われたのでモザイク処理を施しました。

 
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著者撮影

で、私はというと、アオザイではないので別のテイラーへ。
日本人のスタッフが対応してくれるお店なので、注文の対応も柔軟なのです。

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著者撮影

これを胸ポケットにして、これを襟に使ってポロシャツに……とあれこれ注文。
なお、ここでサンプルとして既成品を一着携えているところがポイントです。

現物があれば、気に入った布で同サイズのものをつくるということも可能、つまり布さえあればいくらでも複製できるという訳です。それこそがベトナムにおけるオーダーメイドの最大のメリットのひとつと言えるのかもしれません、最初から型がある場合にオーダーメイドと呼べるかどうかはちょっと微妙だけどね。

 

完成したアオザイを受け取りに行く

アオザイは、その日の昼に注文して、翌々日の夜に完成しました。つまり2日間と半日、おそらくこれがローカル店の平均的な最短期間だと思います。ベトナムでの旅行でホーチミンに3日間もいるなら、初日に注文しておくと上手く時間が使えますね。ただ、日本と違って予定通りに進まないことがしばしばあるので、欲を言えば4日間以上あると安心です。

さて、指定された日時に取りに行くと……。

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著者撮影

べべべ、べーーーん!

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試着した友人(彼女の右肩にいる人はちっさいおっさんじゃなくて鏡に映った私です)。

そして別のお店でつくったTシャツも!

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著者撮影

どどど、どーーーん!

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著者撮影

いいですね!納得のいくものが出来ました。

 

ベトナムでのオーダーメイド・まとめ

と、ベトナムで布生地選びからオーダーメイドするまでの一連の流れを紹介いたしました。
これまでに書かなかった情報も含めて、まとめてみましょう。

・ホーチミンで布生地を選ぶならタンディン市場がオススメ。

・布生地は1メートルから、相場は5万ドン(およそ250円)から20万ドン(およそ1000円)まで。

・合計3メートル以上になると少し安くしてくれる傾向がある。

・アオザイのオーダーメイドに掛かる日数は店にもよるが、平均的にローカル店で最短2日間と半日。今回の注文価格は、布生地持ち込みで、50万ドン(およそ2500円)でした。

・今回登場した日本人対応のテイラーでの注文から納品までの期間は、アオザイやワンピースは最短1日間から、スーツは最短2日間から。ただし、注文枚数や希望デザインによって変動。価格はアオザイとワンピースは50ドル、スーツは女性で120ドル、男性で150ドルから、とのことでした。自分で布生地を持ち込む場合だと、おおよそ2/3の価格になります。

 
はい!

ま、冒頭でつくれつくれと煽ったものの、つくったアオザイを日本で着る機会はそうそう無いでしょう。ただ、女性ならワンピース、男性ならスーツといったように気軽につくっても良いのではと思います。

日本ではオーダーメイドって高い印象がありますからね。
既成品一着、またはそれ以下の価格で、あなただけの服がつくれちゃう訳ですから!

 

今回登場した市場とお店の店名&住所

タンディン市場
店名:Cho Tan Dinh
住所:Cho Tan Dinh, Hai Ba Trung, District.1, Hochiminh city.

ローカルのアオザイ・テイラー
店名:Ao Dai Xua Nay
住所:599 Nguyen Dinh Chieu, District.3, Hochiminh city.

日本人が常駐しているテイラー
店名:Tailor Ralan
住所:254B Ly Tu Trong, District.1, Hochiminh city.

 
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著者撮影

最後に全く関係ありませんが、ローカルのテイラーにあった、見てるだけでいじりたくなるスイッチ盤。

 
(text & Photo:ネルソン水嶋)

 
ネルソン水嶋の「勝手にベトナム観光開発局」
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