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- 「トーフ」と「豆腐」は別物。ミャンマーで楽しむ2つの豆腐
これがトーフ。枠に入れて固まった状態で市場へ持ち込み、切り売りする。 著者撮影
東アジアから東南アジアにかけて広く日常的に食べられている豆腐。見た目や食感は日本の木綿豆腐に似ており、呼び名も中国では「ドウフ」、韓国は「トブ」、ベトナム「ダウフー」、カンボジア「タウホー」、ラオス「タウフー」と、ほとんどがよく似た発音です。豆腐の発祥は中国といわれますが、名前と製法がセットになって各地へ流布したことがうかがえます。
ミャンマーにも「トーフ」と呼ばれる食べ物があるのですが、これは見た目も味も周辺国の豆腐とかなり異なります。
トーフの原料は大豆にあらず
材料は大豆でなくヒヨコ豆やエンドウ豆で、凝固剤は使わず、豆が含むでんぷん質だけで固まらせます。色は卵豆腐のような黄色味を帯びており、ねっとりした舌触りは胡麻豆腐を思わせます。
トーフを作っているところ。シャン州のカウンダイン村にて。 著者撮影
このトーフは、ミャンマーではシャン族の食べ物として認識されています。シャン料理店にはたいていトーフを使ったメニューがありますし、市場でトーフを扱う店があれば、店主はシャン族とみて間違いありません。
トーフを食べるならシャン族料理店へ
トーフ料理の代表格は、揚げて甘酸っぱいタレをつけて食べる「トーフジョー」や細く切って野菜の千切りと和える「トーフトゥッ」のほか、しっかり固まる前の状態で麺にかける「トーフヌエ」などがあります。
手前がトーフジョー、奥がトーフトゥにするために細切りしたトーフ。 著者撮影
シャン族はミャンマー東部のシャン州を中心に暮らし、国民の9%を占める国内第3の規模を誇る民族ですが、シャン料理は主要民族であるビルマ族にも愛されており、こうしたトーフ料理も全土で楽しめます。
大豆で作る豆腐もあるけど…
しかしミャンマーにはトーフ以外にも、日本の木綿豆腐そっくりな大豆から作る食品があるのです。こちらは「ペービョー」と呼ばれ、意味はミャンマー語で「平たい豆」です。つまり、アジア全土で中国のドウフに近い名称で呼ばれている大豆の豆腐が、ミャンマーでだけまったく異なる名称になってしまっているのです。
大豆製の豆腐売り場には、たいていモヤシも売っている。 著者撮影
個人的な推測にしか過ぎませんが、シャン族のトーフが先にこのエリアで普及した後に大豆製の豆腐がやってきて、区別するために別の名前がついたのではないでしょうか。
ベジタリアンのたんぱく源としての豆腐
熱心な仏教徒が多いミャンマーには肉食を避ける人たちも一定数いるため、大豆製豆腐は彼らの貴重なたんぱく源にもなっています。そのため、シャン州を除いてはトーフよりもポピュラーな存在といえます。
大豆製豆腐をトマトなどと炒めた料理で、ミャンマー全土で食べられる。 著者撮影
ミャンマーにはアヒルの血を固めた「ベードゥエ」(アヒルの血という意味)という食べ物があり、これを模した赤い豆腐「ペードゥエ」(豆の血という意味)もあります。黒い豆を使って作るんだそうです。
こちらがペードゥエ。ペービョーと同じく炒め物などに使う。 著者撮影
世界中で食べられている食品のこうした国によるバリエーションには、文化の伝播や民族移動といった様々な歴史が刻まれているようで、いろいろと想像すると楽しくなってきませんか?
(text & photo : 板坂 真季)
隅から隅まで!魅惑のミャンマー探検
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