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- 今のうちに予習!世界遺産アンコール・ワットのレリーフ
photo:世界遺産イェーイ!
カンボジアの至宝アンコール・ワットと言えば、まずその規模の大きさに圧倒されるのですが、実はその繊細さも他に類をみないものです。繊細さを代表しているのが、壁面に掘られた躍動感あふれるレリーフ(浮き彫り)。レリーフは、当時の生活や、宗教、王の姿などを生き生きと現代に伝えています。今回の記事ではそんなアンコール・ワットのレリーフに迫ってみます。
アンコール・ワットのレリーフの概要
アンコール・ワットはクメール王朝のスーリヤヴァルマン2世によって1113年頃から約35年かけて造営されたビシュヌ神などを祀るヒンドゥー教の大寺院。3重の回廊で中央祠堂を囲む造りになっているのですが、今回ご紹介するレリーフは、一番外側にある第1回廊に描かれているものです。第1回廊の壁面には1辺に2個づつ、物語をモチーフにしたレリーフがびっしりと描かれています。
photo:世界遺産イェーイ!
普通に歩いてくると西側の回廊から入ることになりますので、反時計回りで以下の順に観光するのが一般的です。
1. 西側の南:マハーバーラタ(クルクシェトラの戦い)
2. 南側の西:創建者スーリヤヴァルマン2世の軍隊
3. 南側の東:天国と地獄
4. 東側の南:乳海攪拌(にゅうかいかくはん)
5. 東側の北:ヴィシュヌ神の悪魔征伐
6. 北側の東:クリシュナと魔王
7. 北側の西:神々と悪魔の戦い
8. 西側の北:ラーマーヤナ(ランカの戦い)
この第一回廊は、東西215m、南北187m!と、そのスケール感には圧倒されます。全てを見ようとすると大変なので、観光する時はポイントを絞って観光することをおすすめします。実は、今のうちにぜひチェックして頂きたいのが Googleのストリートビュー。ストリートビューでは見どころスポットにクリックひとつで飛べるように作られているので、迷うことなく目的地に行くことができます。実際に訪れることができない今はこちらを利用して予習しておきましょう!
アンコール・ワットを建造したスーリヤヴァルマン2世とは
スーリヤヴァルマン2世 (南側の西:創建者スーリヤヴァルマン2世の軍隊) photo:世界遺産イェーイ!
まずは、アンコール・ワットを建造し、レリーフにも描かれている「スーリヤヴァルマン2世」についてご紹介します。スーリヤヴァルマン2世は、1113年頃に国内を統一して王位につきました。「スーリヤ」は「太陽」を「ヴァルマン」とは「偉大な人」を意味します。当時のクメール王朝の王位は世襲制ではなく、王位継承戦争を経て王位につくパターンが多かったようです。スーリヤヴァルマン2世も世襲ではなく、争いに勝ち抜いて王位につきました。当時、王は即位するとすぐにその権力を示すために寺院を築きます。スーリヤヴァルマン2世は、ヒンドゥー教を信仰していたので、ヒンドゥー教の神であるヴィシュヌ神を祀る寺院としてアンコール・ワットを築いたのです。
ヴィシュヌ神 (東側の南:乳海攪拌) photo:世界遺産イェーイ!
当時、王は神の生まれ変わりとして、強い権力をもって国をおさめていました。そのため、アンコール・ワットの中央祠堂にはスーリヤヴァルマン2世とヴィシュヌ神が合体した像が祀られていたそうです。また第1回廊のレリーフではヴィシュヌ神とスーリヤヴァルマン2世が、似た顔で描かれています。
それでは、主要なレリーフについてご紹介していきます。
南側の西:創建者スーリヤヴァルマン2世の軍隊
この壁面にはスーリヤヴァルマン2世が勝利した時の軍隊パレードの様子が描かれています。
photo:世界遺産イェーイ!
玉座に座っているスーリヤヴァルマン2世。右下に座っている占い師から戦いについて占ってもらっているところ、と言われています。周りの家来からたくさんの日傘を差し出されていますが、この日傘は位の高さを表しています。
photo:世界遺産イェーイ!
象に乗って出陣するスーリヤヴァルマン2世。神を象徴するとがった三角の帽子をかぶっており、やはり多くの日傘が差し出されています。王の姿が国家の寺院に描かれているというのは、アンコール・ワットの特徴のひとつです。
東側の南:乳海攪拌(にゅうかいかくはん)
ヒンドゥー教の天地創世神話を描いた「乳海攪拌」は、神々と阿修羅が協力して大蛇の尾を引っ張って綱引きをしながらかき回し、乳海の底から不老不死の薬(アムリタ)を湧き出させるというお話です。
photo:世界遺産イェーイ!
こちらは、かき回している(撹拌)しているところ。中央で指揮をとっているのがヴィシュヌ神、大亀の上に綱引きの軸になるマンダラ山があります。そのマンダラ山に蛇を巻きつけて互いにひっぱりあって乳海を撹拌しています。左側が阿修羅で右側が神々、上部には乳海撹拌で生まれたアプサラス(天女)が空を舞っています。下段にはかき回された魚達の姿が。
photo:世界遺産イェーイ!
5つの頭を持つ大蛇ヴァースキを引っ張る阿修羅。蛇はカンボジアの建国神話にも登場する、カンボジアの人々にとっても大変馴染みのある動物でもあります。人間と結婚した蛇娘のために、父である蛇の王(ナーガ)が、水を飲み干して大地をつくったというお話で、その大地がカンボジアとなったと言われています。
photo:世界遺産イェーイ!
大蛇ヴァースキのしっぽがぐるりと跳ね上がっています。インド神話に登場する神猿ハヌマーンも、神々側を手伝っています。
この綱引きの場面の後、海中から太陽や月、アプサラス(天女)、後にヴィシュヌの妻となるラクシュミーやが現れ最後にアムリタが出てきます。そのアムリタを神々と阿修羅が戦いで奪い合うのですが、激しい戦いの末にヴィシュヌの働きで神軍が勝利を収め、神々が不老不死となるという結末になっています。なんとなくでも良いので話の内容を理解しておくと、実際にレリーフを見た時に、どの場面を描いているのか想像ができるので、観光がグッと楽しくなりますよ!
ちなみにレリーフは基本的に、下部が近景、中央部が中景、上部が遠景となっています。画面を分割して遠近感を出そうとしています。
photo:世界遺産イェーイ!
こちらのアンコール・トムの乳海撹拌は、立体的に表現されています。左側に神々が蛇を引っ張っている像が、右側には阿修羅が蛇を引っ張っている像があります。このように乳海撹拌はアンコールの遺跡群にある様々な遺跡でモチーフとして使われています。
西側の北:ラーマーヤナ(ランカの戦い)
ラーマ王子とシータ妃は結婚し旅に出て森の中で暮らしていたのですが、魔王ラーヴァナがシータ姫をさらって監禁していまいます。監禁されたシータ姫を、ラーマ王子と猿の武将ハヌマットが救出するという物語です。
photo:世界遺産イェーイ!
こちらはラーマヤナのハイライトといえる場面。ラーマ王子が猿の武将ハヌマットの肩に乗って弓を引いています。ここでラーマ王子の姿に注目して頂きたいのですが、スーリヤヴァルマン2世とよく似ていませんか?実はラーマ王子はヴィシュヌ神18番目の化身。スーリヤヴァルマン2世もヴィシュヌ神の生まれ変わりとも考えられていたので、この2人の容貌が似ているのでしょう。
photo:世界遺産イェーイ!
魔王ラーヴァナが登場する場面!ラーヴァナは20本の腕と10の頭を持ちます。
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こちらはかみつきを得意とする猿軍の武将アンガダ。馬にガブリとかみついています!猿軍のかみつきが功を制したのか、結局ラーマ王子軍が魔王ラーヴァナを打ち破り、無事にシータ姫は助け出されます。
西側の南:マハーバーラタ(クルクシェトラの戦い)
photo:世界遺産イェーイ!
こちらは古代インドを代表する叙事詩「マハーバーラタ」。北インドの名門バーラタ族の王位継承をめぐる大戦闘がテーマ。こちらのレリーフはパーンダヴァ軍とカウラヴァ軍が対決しているクルクシェトラの戦いが描かれています。中央部では馬が戦車を引き、下部には、やりを持つ兵士の姿が見えます。
以上アンコール・ワットのレリーフをご紹介しました。レリーフは、何が描かれているのかを理解してから訪れると、楽しみが何百倍にもなるんです!行けない今のうちにじっくりとレリーフを予習して、Googleのストリートビューを使ってバーチャル散歩で、どこに何の場面が描かれているのかをしっかりとチェックしておきましょう。どうしても個人旅行だと見落としてしまうことがあるので、ガイドさんと一緒にまわるのもおすすめです!
アンコールの遺跡群
登録 | 1992年 |
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登録基準 | 「人間がつくった傑作」、「文化交流」、「文明の証拠」、「建築技術」 |
アクセス | 日本からプノンペンまで直行便で約6時間半。プノンペンからシェムリアップまで飛行機で約1時間 |
(text : 鈴木かの子)
■Googleストリートビュー
アンコール遺跡はこちら
■参考文献
アンコール・ワットへの道 (楽学ブックス)
石澤良昭(著)、内山澄夫(写真) (著)
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