タイ
グルメ
タイ的ガストロノミーの冒険!

タイ食材の限りない可能性を料理で魅せるバンコクで話題の2軒

「アジアのベストレストラン50」のトップに選ばれた『Gaggan』の台頭に続けとばかりに、数々のガストロノミックレストランがオープンしているバンコク。インド風、ドイツ風、フレンチ風などさまざまなタイプの店が軒を並べるなかでも、今回ご紹介するのはタイ食材とタイ料理のメソッドを取り入れつつ独自のスタイルを見せてくれる2軒。バンコクで美食旅を極めるなら、ぜひタイでしか食べられないタイスタイルのガストロノミー体験はいかがでしょうか。


 

話題のノーズトゥテールをイサーン料理のメソッドで表現
「100 Mahaseth」

さまざまな肉の部位が揃う   著者撮影

ここ数年続いている世界的な肉ブーム。バンコクも例外ではなく、肉料理を売りにしたレストランが次々とオープンしていますが、「タイならでは!」の味を堪能するなら断然ここ。ノーズトゥテール(鼻先から尻尾まで食べ尽す)をテーマに、さまざまな部位の肉をイサーン料理を中心とした東南アジア料理スタイルで食べさせてくれる新しいタイプのレストランです。今まで肉料理といえば西洋風が当たり前だったバンコクだけに、イサーンスタイルのおしゃれな肉料理は瞬く間に話題となり、今や予約必須の人気店の仲間入り。タイ人は牛肉を食べない、と言われていたのはひと昔前のこと。チャオプラヤー川近くの静かな地区にあるのにも関わらず、夜な夜なセレブなタイ人たちが集い、驚くほどの量の肉料理をたいらげています。

Bone Marrow 320B とTenderloin 700B の盛り合わせ   著者撮影

すべてのテーブルでオーダーされているシグネチャーがこちらの「Bone Marrow」。骨髄のローストといえばイギリス料理が有名ですが、トッピングはレモングラスやエゴマ、味付けはマナオやパームシュガーを用いていて、その味わいは確かにアジアの香り。とろりとなめらかな骨髄の脂とプチプチとしたエゴマの食感が絶妙にマッチ! 爽やかなレモングラスの香りがふわりと広がり、今までのタイの肉料理にはなかった、新しいおいしさを体験できます。

スリンのビーフを使っているというテンダーロインは、「タイの牛肉は硬くておいしくない」という今までの思い込みを一蹴してくれる柔らかさと味わい深さ。シンプルな調理法で、タイビーフのおいしさをまっすぐに伝えてくれます。添えられているのがマッシュポテトではなく、ヤムマクア(タイ風のナスのサラダ)なのもポイント。タイの食材と調理法の魅力を、今までにないスタイルで堪能できるのはタイ料理好きには嬉しい限りですね!

Pork with Koon & Chamuang Salad 240B   著者撮影

こちらは揚げたポークショルダーに、チャムアンという酸味のあるタイのハーブを添えたもの。チャムアンの葉は生で食べると酸味に加え少々の渋みがあり、甘い豚肉の脂身とよく合います。ライムと唐辛子の効いた爽やかなソースと、蓮の茎の輪切りのシャクシャクとした食感も、いいアクセントに。

Somtam Luang-Prabang 150B   著者撮影

肉料理と合わせたいのが、イサーン料理の定番ソムタム。こちらはラオスの古都、ルアンパバーンをイメージした一品で、細切りではなく、短冊状にカットされた青パパイヤのパリパリとした食感がポイントです。イサーンのソムタムの定番食材、メットガティン(ガティンという食物の種)や数種類の生のナス、トマトなど具だくさんで賑やかなサラダは、肉料理の箸休めにぴったりです。

Thai Pork Jerky 220B   著者撮影

ナンプラーやパームシュガー、スパイスなどに漬け込んだポークショルダーのジャーキー。スイートチリソースをベースにしたソースが添えられていますが、香ばしく柔らかな仕上がりでそのままでも十分美味! 肉の旨みをしっかりと感じられ、ビールやワインが進む味わいです。

ほかにも、牛のタルタルやタイの黒豚を使ったメニューなど、気になる肉料理がたくさん! ここ数年でぐっとレベルの上がったタイの肉のおいしさを思う存分実感できる1軒です。

著者撮影


100 Mahaseth
・住所:100 Mahaset Rd., Bangkok
・電話:(+66)2-235-0023
・時間:18:00-23:00 ※無休
・HP:https://m.facebook.com/100Mahaseth

 

テキサスから来た若手シェフが表現するタイ食材の新しい世界と可能性
「Canvas」

カウンターの向こうは広々としたオープンキッチン   著者撮影

一般的なタイ料理の方向性とはちょっと違う角度から、タイ食材の可能性について考えさせてくれるのがトンローにオープンしたこちらのレストラン。使っている食材は普通のタイ料理に使われるものが多いのに、目でも舌でも楽しめるまったく新しい食の世界を見せてくれます。今までに見たことのないような美しいお皿の数々を前に驚くのは、奇をてらったような表現が一切感じられないのにも関わらず、すべてのお皿が個性的かつ繊細で印象に残る点。ひとつひとつの食材が持つ香りや味わいのもっとも魅力的な部分を、丁寧に丁寧に重ねていくことで生まれる洗練された多重奏のような味わいからは、タイの食材と真摯に向き合うシェフの誠実な姿勢が見て取れます。

market vegetables 340B   著者撮影

前菜でぜひ味わっていただきたいのが、20種類以上の野菜やハーブ、エディブルフラワーなどを使ったこのサラダ。ドレッシングとして添えられているのはハーブやチリを加えたパイナップルのシャーベットで、その冷たさが野菜の味わいを引き立ててくれます。また、ドレッシングが少しずつ溶けていくことでサラダとしての味わいはもちろん、一緒に口に運ぶ野菜の印象までもが変化していくところも面白い! 時間が経つごとにさまざまな味わいを楽しめる一品です。

Catfish 640B   著者撮影

一見、うなぎの蒲焼きのようにも見えるのは、ナマズのグリル。主役はナマズ、味付けはタマリンドベース、とタイど真ん中の食材を使っているとは思えないほど、洗練された盛りつけにびっくり! ナムリアップ(中国オリーブ)を使ったペーストも添えられていてさらにタイ感満載なのに、その味わいはいい意味でタイ料理を感じさせない繊細さと上品さ。ナマズが苦手だと思っている方にこそ、一度試してみていただきたいひと皿です。

lamb loin 1080B   著者撮影

とても柔らかで香りのいいこのラムは、イサーン産の仔羊を使っているそう。今まで、タイ産のラムはマッサマンなど味付けの濃い料理でしか食べたことがなかったのですが、シンプルなローストでここまでおいしくいただけるということがわかって得した気分に。添えられたナスはヤムマクア(タイ風のナスのサラダ)のような仕上がりながら、ラムとよく合う点も驚きです。

shirimp noodles 360B   著者撮影

そして、タイのグルメたちの間で話題となったのがこちらのヌードル。麺にもソースにもエビの旨みと甘味をぎゅーっと閉じこめた贅沢な味わいで、噛みしめるほどにエビの香りが口中に広がります。さらに驚くのが、もちもちとしたその麺がもち米粉から作られていてグルテンフリーという点。ほんのりと広がるこぶみかんの香りと唐辛子の刺激も絶妙で、若いシェフならではの柔らかな発想力に感動すること必至の味わい深さです。

19時を過ぎると、店内は予約客でいっぱいに。必ず予約してからお出かけを   著者撮影

『Gaggan』のような派手さや大胆さはありませんが、研究熱心で誠実なシェフの人柄が伝わってくるような料理はどれも滋味深く心身に染み渡るような優しいおいしさがあり、どちらかというとタイ中級から上級者向け。タイ料理についてひと通り学んだ後で、ひとつひとつのタイの食材が持つ魅力や可能性について、ゆっくりと噛みしめながら味わってみたい方にはぴったりの場所だと思います。


Canvas
・住所:113/9-10 Soi55 Sukhumvit Rd(Thonglor)., Bangkok
・電話:(+66)99-614-1158
・時間:18:00-22:30 (金・土18:00-23:30)
・HP:https://m.facebook.com/Canvasbkk

 
(text & photo : 白石路以)

 
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