TRIPPING! トップ × ASEAN × タイ × 賭博の対象“ムエタイ”がセレブを魅了するスポーツに変貌
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2015.7.22 13:58
本多辰成:スポーツライター
この著者の記事 スポーツコラム ムエタイ
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Lumpini Boxing Stadium (5)
写真提供:タイ国政府観光庁

タイのスポーツと言えば、何を思い浮かべるだろうか? 男女ともに世界ランキングトップに立つセパタクローも有名だが、やはりタイ発祥の格闘技であるムエタイのイメージが強いだろう。格闘技の世界では「世界最強の立ち技」と名高く、広く世界に知られている。

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ムエタイの歴史と伝説のヒーロー

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写真提供:タイ国政府観光庁

ムエタイの歴史は古い。はっきりとした興りは不明だが、その起源は14〜18世紀のアユタヤ時代にまで遡る。当時のタイは常に隣国のミャンマーによる侵略の脅威にさらされており、素手で敵兵を倒す手段として編み出されたのがムエタイの始まりだったとされている。競技として確立されるまでは、「古式ムエタイ」として戦争の際の戦闘術と関わり合いながら発展を遂げてきた。

長い歴史を持つムエタイは、多くのファイターを生んできた。なかでも最も有名なのがナーイ・カノムトムとういうアユタヤ時代の選手で、囚われた仲間の釈放をかけてミャンマーの武術家たちを次々と倒したという伝説が残っている。小学校の教科書にも載っているほどの人物で、タイ人なら知らない者はいない国民的英雄だ。ムエタイがまさにタイの国技であることがよく分かる。

 

ムエタイのステータスを変えたスター、ブアカーオ

だが、タイにおけるムエタイのステータスは、実はこれまでそれほど高いものではなかった。競技が賭博の対象とされてきたことや、貧困層のスポーツというイメージが強かったためだ。貧しい家庭に育てば、「女は売春婦、男はムエタイ選手になるしか生きていく術はない」などとも言われてきた。国技とはいえ、尊敬や憧れの対象にはなっていないのが実情だった。

その状況が近年、大きく変わり始めている。きっかけは日本の格闘技ファンにもよく知られるタイ出身のムエタイ王者、ブアカーオ・ポー・プラムック選手の出現だった。世界に認められるスーパースターがムエタイ界に登場したことで、ムエタイを取り巻く状況は一気に好転していった。

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写真提供:タイ国政府観光庁

ブアカーオ選手は1983年、カンボジアと国境を接するタイ東北部のスリン県に生まれた。多くのムエタイ選手たちと同じく、家庭は貧しかった。8歳でムエタイを始めると、タイ国内でタイトルを次々と獲得。2004年、21歳の時に日本で開催された「K-1 WORLD MAX」に初出場すると、圧倒的な強さで勝ち進み、決勝戦では前年のチャンピオンだった日本の魔裟斗選手を倒して優勝を飾った。

2006年にも同大会で優勝して史上初の2度目の王者となり、「史上最強の王者」とも評されたブアカーオ選手は、魔裟斗選手のライバルとして日本でも一世を風靡。容姿も端麗なことから女性ファンの人気も集めた。そんな海外でのブームもあって、タイ国内でもブアカーオ人気に火が付いた。どちらかといえばネガティブなイメージがつきまとっていたムエタイのイメージが、徐々に変わっていった。

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写真提供:タイ国政府観光庁

それまでムエタイに興味を持つことなどありえなかった都会の若い女性やセレブたちなども、今ではムエタイの試合を観戦することも珍しくなくなった。ブアカーオ選手の圧倒的な人気が、国技の地位を劇的に変えたのだ。国技のステータスが、海外から「逆輸入」されたような不思議な展開ともいえる。

 

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