タイ
カルチャー
スポーツと企業が国を変える

タイでF1グランプリ開催も間近!? 1つのサッカークラブが全てを変えた町「ブリーラム」

2年前のAFCアジアチャンピオンズリーグ_決勝トーナメント1回戦
2年前のAFCアジアチャンピオンズリーグ、決勝トーナメント1回戦の試合(筆者撮影)

4月7日、Jリーグの強豪・ガンバ大阪がタイへやってきた。クラブチームのアジア王者を決めるAFCアジアチャンピオンズリーグを戦うためだ。迎え撃ったタイの王者・ブリーラム・ユナイテッドは、

本文を読む


熱戦の末に1対2と逆転で昨季のJ1優勝チームに惜敗した。

そのブリーラム・ユナイテッドの存在によって、このところサッカーの世界ではアジアでも知られるようになった「ブリーラム」。とはいえ、クメール遺跡群の残るパノムルン歴史公園などの観光地はあるものの、一般の観光客には馴染みの薄い町だろう。

ブリーラム県があるのは、イサーン地方と呼ばれるタイ東北部。バンコクからバスで約6時間、人工的なもののほぼない牧歌的な一本道を延々と進んだ先にブリーラムの町は見えてくる。

西隣にはイサーン地方の玄関口と呼ばれるコラート(ナコンラチャシマー県)があり、南はカンボジアと国境を接する。ブリーラム・ユナイテッドがなければ、おそらくバックパッカーでさえあえて立ち寄る機会は少ないエリアだろう。

ブリーラム
ブリーラムの街(筆者撮影)
そんな地方の小さな町が今、一つのサッカークラブによって大きく変わろうとしている。

ブリーラム・ユナイテッドがブリーラム県を本拠とするようになって、まだ日は浅い。もともとは世界遺産の遺跡群で有名なアユタヤ県にあったチームを、ブリーラム県出身の元大物政治家であるネーウィン・チッチョープ氏が買収。2010年シーズンを前に、ホームを故郷に移したことでチームの歴史は始まった。

クラブの運営にはネーウィン氏の巨額の私財が投入され、2011年にはアジアでもトップクラスの近代的なスタジアム「サンダーキャッスル」が完成。強化されたチームは瞬く間にタイ最強クラブとなり、2013年にはAFCアジアチャンピオンズリーグでもベスト8に進出するなどアジアでもその名が知られるようになった。

市内にはチームの名を冠したホテル「アマリ・ブリーラム・ユナイテッド」がオープンし、航空会社のエアアジアは先日行われたガンバ大阪戦に合わせるように4月2日よりバンコク-ブリーラム線の就航を開始。ブリーラム・ユナイテッドの存在によって、町全体に劇的な変化がもたらされている。

ブリーラムのスタジアム_サンダーキャッスル
スタジアム(筆者撮影)

 
141005_07
2014 AUTOBACS SUPER GT Round7 BURIRAM UNITED SUPER GT RACE ©GTA

そんなブリーラム・ユナイテッドの勢いは、サッカーの世界にとどまらない。昨年9月にはタイ初の国際規格のサーキット「チャーン・インターナショナルサーキット」が、ネーウィン氏の手によってホームスタジアムの裏手に完成。同10月には、こけら落としとして日本でも注目度の高いカーレース「SUPER GTシリーズ」が開催された。

日系企業をはじめとする多くの自動車メーカーの現地工場が置かれるタイで世界トップレベルのカーレースが開催されたことは、モータースポーツの歴史においても意義深いことだった。

そして、このサーキットの誕生によって期待されているのが、タイでのF1グランプリ開催だ。

F-M-120726_1387-680x441
参考:F1シンガポールグランプリ   © 2014 Singapore GP Pte. Ltd. All rights reserved.

タイでのF1グランプリ開催の可能性は以前から注目されていて、2012年にはタイ当局とF1商業権保有者との間で開催へ向けて基本合意に達していた。だが、バンコクの王宮付近の市街地を走るコースでのナイトレースとして計画されていたグランプリは、バンコクの歴史的地域でのレースを禁止する法律をクリアできずに躓いてしまった。

そんな中、ブリーラム・ユナイテッドによってF1開催が可能な規格のサーキットが誕生したことで、再びF1タイグランプリへの道が開かれた。実際、昨年にはサーキットの運営会社がF1関連のコンサルタントと相次いで契約を結ぶなどF1開催を視野に入れた動きも見られ、期待が高まっている。

たった一つのサッカークラブによって全てが変わろうとしている地方都市、ブリーラム。バンコクから約400キロ離れたタイ東北部の田舎町に、遠くない未来、世界が注目する華やかなF1のエンジン音が響く日が来るかもしれない。

何をむ?

国名・都市名、ジャンルを選ぶと、読みたい記事を絞りこみできます