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- 野球のW杯WBC予選開幕!どうなる!?フィリピン
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来年開催される野球の世界最強国を決める大会、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の予選が2月11日にスタートする。同大会で日本は、2006年の第1回大会と2009年の第2回大会で連覇を果たしており、2013年に行われた前回大会でもベスト4に進出。世界ランキングでも1位に君臨しており、日本は誰もが認める世界屈指の野球王国だ。
前回大会の本戦でグループリーグ3位までに入った計12カ国は、今大会の予選を免除される。もちろん日本もそこに含まれており、予選には中南米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、アフリカと世界各地から計16カ国が参加。東南アジアからは唯一、フィリピンが出場する。前回大会の予選にはタイも出場していたが、残念ながら今回はタイに替わってパキスタンに出場資格が与えられた。
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野球不毛の地である東南アジアにあって、唯一の例外といえるのがフィリピン。歴史的にアメリカ文化の影響を色濃く受けていることもあり、古くから野球が愛されてきた。1934年に造られた首都・マニラのリザール・メモリアルスタジアムは、伝説の野球選手であるベーブ・ルースがプレーした現存する数少ない球場のひとつ。1954年に行われた第1回のアジア選手権では決勝で日本を下して初代王者に輝くなど、フィリピン野球は東南アジアどころかアジアでも屈指の伝統を誇る。
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戦前から戦後にかけて、野球はフィリピンの国技ともいえる存在だった。ところが、同じくアメリカのスポーツであるバスケットボールの人気に押されて次第に衰退。プロリーグも存在せず今ではマイナースポーツのひとつに成り下がってしまっているが、長い歴史が積み重ねてきた財産は、依然として東南アジアでは別格の輝きを見せている。
そんなフィリピンの野球は、日本とのつながりも深い。10年ほど前にフィリピンで野球教室を開いたのが縁で関わることになった板倉国文氏は、代表監督などを歴任してフィリピン野球の発展に尽力。他の東南アジア諸国でも日本人の指導者が伝道者として活躍しているが、アメリカ野球に起源を持つフィリピンでも近年は日本野球の血が注がれてきた。
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さらに、WBCの誕生がまた違った形での日本とのつながりも生んでいる。WBCは他の国際大会に比べてナショナルチームの基準が緩やかで、たとえば両親のどちらかが国籍を有していればその国の代表としてプレーすることができる。フィリピンの場合、海外に多くの「フィリピン系選手」が存在するため、そういった選手たちをナショナルチームに招集することが可能だ。
たとえば、メジャーリーグで最高の投手に贈られるサイ・ヤング賞を受賞したことのあるティム・リンスカム投手はフィリピン系メジャーリーガーの代表格。その他にも、マイナーリーガーまで含めればかなりの数の選手たちがフィリピン代表資格を有している。
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そして、日本の野球界にもフィリピン代表として戦う資格を持つ選手が複数いる。実際、前回のWBC予選ではフィリピン人の母を持つ小川龍也投手(中日ドラゴンズ)がフィリピン代表として出場しており、その他にも山崎康晃(横浜DeNAベイスターズ)、戸根千明(読売ジャイアンツ)の両投手も同じくフィリピン人の母を持ち、資格がある。
プロ選手以外にも該当選手は多く、一昨年に18Uアジア選手権で18Uフィリピン代表監督を務めた高橋将人さんも今回、代表入りを目指して選考合宿に参加した。「母親がフィリピン出身なので、育ててもらった野球を通して母の母国に恩返しができれば、という気持ちがあった」とフィリピン代表への思いを語る。
今回は残念ながら、結果的に日系選手の代表入りはならなかった。メンバー発表直前に噂された現役メジャーリーガーの代表入りも実現しなかったが、海外でプレーする多くのフィリピン系選手たちが実際にメンバー入りを果たした。フィリピン代表が予選で対戦するのは、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの3カ国。本戦出場への道は非常に険しいが、東南アジア野球を引っ張る存在としてフィリピンの健闘を祈りたい。
( text : 本多 辰成 )
スポーツコラム「スポーツが繋ぐ! 東南アジアと日本の新時代」
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