インドネシア
観光
秘境にいきなりスポットライト!

有名旅行雑誌が選んだ ナンバー1リゾートのあるインドネシア「スンバ島」

世界ナンバー1に選ばれたニヒワトゥ。新しい客室のプライベートプール付ツリーハウス   著者撮影

インドネシアのバリ島の南東、東ヌサトゥンガラ州に属するスンバ島。昨年夏から突如として、この島へ注目が高まっています。そのきっかけとなったのは、世界的な海外旅行雑誌『トラベル+レジャー』誌の「ワールド・ベスト・アワード」の「ナンバー1ホテル・イン・ザ・ワールド」に、この島のリゾートの“ニヒワトゥ”が選ばれたのです。


 
おそらくこれがバリ島のリゾートだったら、「ふーん、そうなんだ~」と驚きもしなかったでしょう。それが、500年くらい時をさかのぼったような、秘境のスンバ島。「え、あそこが?」と意表を突かれつつも、細部を思い起こせば、深く納得の受賞です。

ツリーハウスの内部。窓のスペースが広く、周囲の自然と溶け合うような造り   著者撮影

スンバ島は、バリ島から南東へ、国内線で約50分。バリ島の約2倍の広さの約1万1000平方キロの面積ながら、人口はその6分の1の約65万人。代々受け継がれている習慣や文化が、彼らの暮らしにしっかりと根付いています。

スンバ島のタンボラカ空港も、“マラブの家”のようなとんがり屋根   著者撮影

スンバ島では地元の村へ訪問するツアーがポピュラーです。そこで目にするものは、驚きの連続です。村にはトンガリ帽子のような形をした“マラブ(精霊)の家”が連なっています。この屋根のとんがった部分はマラブのための神聖な場で、この世と目に見えない世界との接点でもあるそう。竹を粗めに編んだ床は、隙間から落ちた食べ物が、ブタなどの家畜の餌になるよう仕組みがされています。床下では赤ちゃんブタにお乳をあげているおかあさんブタや、小さな子犬たちが平和そうに寝転んでいます。

トンガリ部分に精霊が宿っている“マラブの家”   著者撮影

村へ訪れなくても、道路脇に無造作に置かれた巨大な墓石を目にする機会もあるでしょう。この花崗岩の墓石は権力者の象徴を表すもので、重さにして平均6トンもあり、大きなものは20トンも。かつては、他界した権力者とともに、妻や奴隷、ブタや牛、馬も埋葬されていたとか! 今でも、動物の生贄の数が地位と名声を示すことになり、そのために財政が破たんしてしまう家族もあるそうです。

巨岩の墓石のサイズを比べようと、ガイドさんに脇に立ってもらいました   著者撮影

また、スンバ島の奇祭に「パソーラ」という儀式があります。これは米作を行う前の2~3月に開催される、いわば村対抗の騎馬戦。そう聞くと、運動会のようなものかと想像しがちですが、100人以上の男性が手に槍をもち、この島特有のスンバ馬にまたがって戦うのです。毎年、けが人が続出し、時には死者が出ることもあるそう。けれど、流した血が大地を豊かにして、豊作につながると信じられているのです。

武器であり、霊的なものでもあるクリス(短剣)を腰に差した男性。市場にて   著者撮影

ニヒワトゥの中には厩舎があり、スンバ馬に乗ることもできます。こちら、まだ子供のスンバ馬   著者撮影

そんなスンバ島について、西洋人による最初の記述は、探検家マゼランに同行したピガフェッタによるもの。手つかずのビーチや島の美しい景色、緑の丘に点在する村、巨石の墓が連なる谷、そして上質なイカットを身にまとった誇り高き人々。そして当時はサンダルウッドの木々が島を覆い、空気にも香りが漂っていたそう。

残念ながら、サンダルウッドの森はアジアやアラブ諸国の輸入商によって伐採が繰り返され、今はもうハゲ山になってしまいました。けれど、美しい海はおそらく当時と変わらないでしょう。

たまたま見かけた学校での踊りの練習風景   著者撮影

学校の脇を車で通った時、伝統舞踊の練習をしているところに出くわしました。練習中は真剣な表情でも、休憩時間になるとちょっぴりシャイな今どきの子供たち。こうして島の伝統は次世代へと受け継がれていくのですね。

踊りの休憩中は、屈託のない笑顔の女の子たち   著者撮影

 
(text & photo : 古関 千恵子)

 
ビーチ&リゾートコラム「アジアンビーチ☆マニア」
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