カンボジア
カルチャー
新作ドキュメンタリーから「ボクセカ」まで!

カンボジアの魅力を再発見!どっぷり浸れる、必見カンボジア映画5選

著者撮影 プノンペンの街並み

海外旅行ラバーに厳しい今、エアトリップの日々はもう少し続きそうです。今回は、「カンボジア映画」にクローズアップ!ここ10年で製作された、比較的新しいカンボジアが舞台の映画をピックアップしました。人気の「ボクセカ」やアンジェリーナ・ジョリー監督の話題作、そして今冬公開の新作ドキュメンタリーなどをご紹介!
ジャンルも時代も異なる5作品。映画を通して、カンボジアにどっぷり浸かってみませんか?

東京ドキュメンタリー映画祭2020出品!
カンボジアの「今」を切り取った、新作短編映画2作品

2020年12月5日(土)から11日(金)まで、東京・新宿で開催される「東京ドキュメンタリー映画祭2020」。今年で3年目となる本映画祭では、新作のカンボジア映画2作品が上映されます。
いずれも気鋭の日本人監督・歌川達人氏の作品で、前作『カンボジアの染織物』(2018)に続き、カンボジアの「今」を切り取ったドキュメンタリー映画です。

偶然の「出会い」から生まれたカンボジア映画

歌川監督がカンボジアを撮り始めたきっかけは、大学卒業後、スタッフとして参加していた山形国際ドキュメンタリー映画祭。そこでアジア出身の監督たち出会い、彼らと交流する中で「東南アジアって面白い!」と興味を持ったそうです。そして、たまたまカンボジアでボランティアをしている友人がいたこともあり、馴染みのある同地で映画を撮ることに。

『カンボジアの染織物』では、シェムリアップの森で育まれる絹織物の現場に密着。カンボジアシルク復興の第一人者、故森本喜久男氏の最期の日々を追いながら、自然と伝統の共生を描きました。
今回は「プノンペン」「ダンサー」と、まったく異なるテーマを扱っていますが、いずれも偶然の「出会い」から生まれたとのこと。カンボジアの新たな一面に出会える2作品。ぜひ、「東京ドキュメンタリー映画祭2020」へ出かけてみてはいかがでしょうか。

 

2つの首都で問う「私」「幸せ」とは?
『東京2018 プノンペン』


写真提供:Tatsuhito Utagawa

「あなたにとって幸せとは?」「あなたは誰?」本作では、そんなシンプルかつ本質的な質問を、東京とプノンペンの人々に投げかけていきます。
翌々年にオリンピックを控えた東京。かたやプノンペンは、国会の全議席を与党が獲得したという、政治における分水嶺のような年でした。同じ首都でありながら、まったく異なる環境で暮らす老若男女。「自分自身をスクリーンに見つけたり、逆に他者に出会ったりすることで、何かを考えるきっかけにしてほしい」という監督。彼らから飛び出す答えに耳を傾けていると、思わず「自分ならどう答えるだろう?」と考えさせられることでしょう。

東京2018 プノンペン
・2019年日本・カンボジア映画 32分
・監督:歌川達人

 

息をのむようなダンスパフォーマンス
『時と場の彫刻』


写真提供:Tatsuhito Utagawa

プノンペン拠点のゲイダンスカンパニーを立ち上げた、カンボジア系アメリカ人ダンサーPrumsodun Okと制作したドキュメンタリー。本作では「ゲイ」という枠を超えて、ひとりの表現者としての彼に迫っています。
ピンと張りつめた緊張感の中、鬼気迫るパフォーマンスをご堪能ください。

時と場の彫刻
・2019年日本・カンボジア映画 8分
・監督:歌川達人

東京ドキュメンタリー映画祭2020

日時 2020年12月5日(土)〜11日(金)
場所 新宿ケイズシネマ
HP https://tdff-neoneo.com
上映スケジュール ・東京2018 プノンペン:12月5日(土)12:00〜
・時と場の彫刻:12月9日(水)16:40〜

 
ここからは、DVDやネット配信で視聴できる旧作を紹介します!
 

アンジェリーナ・ジョリー監督作品。幼い少女が見た「狂気の時代」
『最初に父が殺された』

同名のノンフィクションを映画化した、女優アンジェリーナ・ジョリーの初監督作品。幼い少女ルオンの目から見た、ポル・ポト政権下のカンボジアを描いています。

色も音もない世界

クメール・ルージュの時代は、「色も音もない世界」だったそうです。音楽はもちろん、何気ない雑談も禁止されていたため、黒い衣服を着て黙々と働いていた……と。当時を体験した人が言っていました。
本作は「戦争映画」ではありますが、激しい戦闘シーンは少なめです。その代わり、恐ろしいまでの静けさや、日常の小さな幸せが奪われていく様子が淡々と描かれています。

ルオンはプノンペンから地方の労働キャンプへ移動する中、お気に入りの赤いドレスを捨てられ、持っていた服を真っ黒に染められます。そして長い髪をバッサリと切られ、ついには大好きな家族とも引き離されてしまいます。
当たり前だった日常が一瞬で失われる。その恐ろしさは、今回のコロナショックと少し重なる部分があるようにも見えます。

本作の製作は、カンヌ国際映画祭で受賞歴のある、カンボジア映画界の巨匠リティ・パニュ氏。「カンボジアの暗黒時代」を真摯に描写した、胸に迫る作品です。

最初に父が殺された 
・2017年アメリカ映画 2時間16分
・監督:アンジェリーナ・ジョリー
・出演:スレイモック・サリウム、コンペーク・ポーク、ソチェアータ・スウェン
・配信:Netflix

 

カンボジアの魅力がぎゅっと詰まった青春ストーリー
『僕たちは世界を変えることができない。』

(C)2011「僕たち」フィルムパートナーズ

思わずカンボジアに行きたくなる、カンボジアの魅力がぎゅっと詰まった青春映画。
普通の医大生コータが「なんか物足りない」日常を変えたくて、仲間とともにカンボジアの学校建設に奔走する、実話を元にしたストーリーです。
映画には、シェムリアップ&プノンペンの街並みやアンコール遺跡、のどかな農村など、カンボジアの風景がたっぷりと登場。見ているだけで旅行しているような気分になってしまいます。

パワーをもらえる映画

以前、カンボジアに住む日本人の友人たちに「カンボジアのどこが好きか」を聞いたことがあります。すると、複数から「人」という答えが返ってきました。人間的なあたたかさ、笑顔、良く悪くも人間くさいところ……。

コータたちも、実際に現地に行ってカンボジア人と触れ合う中で、自分の中の「何か」が触発されます。そして「なんとなく始めた」プロジェクトに真剣に向き合うようになり、結果的に自分自身が大きく変わっていきます。本作では、そんな「カンボジアの持つ魔力」のようなものが、とても良く描かれていると感じました。

何よりも、若い彼らがカンボジアの青空の下、イキイキと活動している姿は魅力的です。こちらまで元気になれる、パワーをもらえる作品です。

僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.
・2011年日本映画 2時間6分
・監督:深作健太
・出演:向井理、松坂桃李、柄本佑、窪田正孝
・配信:Amazon Prime、Hulu、GYAO!など

  

「一本の映画」から紡がれる、母と娘の物語
『シアター・プノンペン』

(C)2014 HANUMAN CO.LTD

カンボジア初の女性監督、ソト・クォーリーカー氏がメガホンを取った作品。
現代のプノンペンを舞台に、女子大生ソポンと彼女の母親の「知られざる過去」が交差する、ヒューマンドラマです。

ある日ソポンは、偶然入った廃墟寸前の映画館で、一本の映画に出会います。奇しくもそれは、若かりしソポンの母親が主演した、40年前の恋愛映画でした。美しい母の映画に観入るソポンですが、なぜかラストを前に途切れてしまいます。「最後のフィルムは焼失した」という映画館の主人。そこでソポンは、当時の母親にそっくりな自分が主演を努めて、ラストを撮影しようと提案。協力者を集めて、映画製作を始めますが…。

自分で人生を切り開く新しい女性像

映画作りを進めていく中、ソポンにはさまざまな問題が降りかかってきます。カンボジアは今も保守的な面があり、女性が自由に生きるにはハードルが高い社会です。ですが、ソポンは自らの意思と行動で打開し、未来を切り開いていきます。
戦争に阻まれ、自由に生きることのできなかった母の世代。クォーリーカー監督は、若いソポンに新しいカンボジア女性像を託しているのかもしれません。

「映画の撮影地」として出てくるトンレバティ湖畔は、プノンペン郊外にある人気の行楽地。週末は多くの家族連れやカップルたちで賑わいます。
映画には他にも、プノンペンの下町やローカル酒場、ダイヤモンド・アイランドなどローカルエリアが多数出てくるので、観光コースでは見られないプノンペンが楽しめますよ。

シアター・プノンペン
・2014年カンボジア映画 1時間46分
・監督:ソト・クォーリーカー
・出演:マー・リネット、ディ・サヴェット、ソク・ソトゥン
・配信:Amazon Prime、GYAO!など

(Text: 矢羽野晶子)

【連載】シェムリアップてくてく散歩 〜楽しくて、ちょっとディープな街歩き~


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