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東南アジアと日本の絆

カンボジアの子供にサッカーボールを!日系クラブが取り組む活動

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近年、急速につながりを強めている日本と東南アジアのサッカー界。以前から日本サッカー協会やJICA(国際協力機構)を通した指導者や審判員等の派遣は継続的に行われていたが、Jリーグが「アジア戦略」をスタートさせたことで関係はさらに深まっている。Jリーグは東南アジア各国のリーグと提携を結び、ここ数年で東南アジア出身の選手がJリーグでプレーするようにもなった。


 

つながりを強めつつある、日本とカンボジアのサッカー界

東南アジアのサッカーの中心地といえばタイ。Jリーグが「アジア戦略」を開始した2012年に最初に提携を結んだのもタイリーグだった。経済の成長とともに盛り上がりを見せる国内リーグでは日本人選手も数多くプレーしており、日本とのつながりも最も濃密といえる。そして、まだタイほどの注目は浴びていないが、実はカンボジアのサッカー界も日本とのつながりにおいてはタイに次ぐものがある。

現状、実力ではタイに遅れをとっているものの、サッカー界が盛り上がっているのはカンボジアも同じ。代表チームの試合には常に数万人の観客が集まり、国内リーグも年々発展を遂げている。タイ同様にカンボジアでも多くの日本人選手がプレーしているが、選手にとどまらず現在は技術委員長、審判ダイレクター、育成年代の代表監督などを日本人が務めている。

 

本田圭佑選手がオーナーを務めるチームも!カンボジアリーグの日系クラブ

さらに、カンボジアリーグには注目の日系クラブの存在もある。今季から日本代表の本田圭佑選手がオーナーを務めるソルティーロ・アンコールFCがカンボジアの2部リーグに参戦。1部リーグに所属するカンボジアンタイガーFCも日本人がオーナーを務める日系のクラブだ。同クラブは2015年シーズンからカンボジアリーグを戦っており、今季からはホームタウンをアンコールワットのあるシェムリアップに移すなど新たな展開も見せている。

 

日系クラブが子供たちに贈るプレゼント

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カンボジアンタイガーFCは、カンボジアでのサッカーの普及と発展の面でも興味深い活動を行っている。カンボジアの子供たちに夢や希望を与えるため、年間最低5000個のサッカーボールを配るという「One Child, One Ball(ワンチャイルド・ワンボール)プロジェクト」だ。

活動のきっかけは同クラブのオーナーを務める加藤明拓氏が、学生時代にバックパッカーとしてカンボジアを旅した際の経験にあるという。

「15年ほど前、私が貧乏旅行でカンボジアのバッタンバンという町を訪れた時に、一人の男の子と仲良くなりました。その子はストリートに住んでいて、何が一番ほしいかと聞くと『サッカーボール』と答えたんです。今、カンボジアでサッカークラブを運営する機会と縁をいただいて、15年前のあの子がほしかった『ボール』を配ることでカンボジアの人たちに夢や希望を与えられたらと思っています」

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現状、国の発展においては東南アジアでも後進の部類と言えるカンボジア。それだけに、こういった草の根の活動が大きな意味を持つ。カンボジアンタイガーFCで日本語通訳を務めるオム・カロナ氏(25歳)は、同プロジェクトの意義について次のように語る。

「カンボジア人にとっては、このプロジェクトはすごく良くて、夢と希望を与えていると感じています。私はプノンペン出身なので、子供のころは友達とみんなでお金を出し合ってサッカーボールを買っていました。でも、地方の子供たちはボールを手に入れること自体が難しいので、ボールをもらったらすごくうれしいと思います」

 
今、東南アジアの先頭を走るタイの急成長は日本のサッカー界でも注目され始めている。カンボジアも若い選手のポテンシャルはタイにも劣らないとの声があるが、現状ではそれを育てる環境が絶対的に欠けている。日本からの小さな贈り物が、いつの日かカンボジアサッカーの大きな開花につながることを期待したい。

 
(text : 本多 辰成 )

 
連載「東南アジアと日本の絆」
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