カンボジア
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国境越えの新たなルートとなるか!?

国際列車復活? タイ=カンボジア 国境の鉄道

カンボジア側からタイ側を見た国境の鉄道橋  著者撮影

現在、タイのバンコクからカンボジアのプノンペンへ鉄道で移動することはできない。しかし1943年から1961年までは直通列車が運行されていたこともある。つまりその頃は線路がつながっていたのだ。その後は、カンボジアの内戦によりカンボジア国内の鉄道が荒廃したこともあり、直通列車はもちろんのこと、線路自体も国境付近で途切れてしまっている。

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しかし、2015年末にタイ、カンボジア両政府が鉄道の修復に合意、2016年末にも直通列車が復活する、との情報も流れた。本当に国際列車が走る日が来るのか?2016年12月、タイ、カンボジア国境の鉄道の状況を実地調査した。

タイ側から見た鉄道橋 奥にカジノホテルが見える  著者撮影

タイとカンボジアの鉄道が接続していた場所は、タイ側はアランヤプラテート、カンボジア側はポイペトという街である。バンコクからアランヤプラテートへはバスで移動するのが一般的であるが、1日2本、列車も走っている。バンコク・ファランポーン駅5:55発の列車に乗れば11:35にアランヤプラテートに到着する。遅延が当たり前と言われるタイ国鉄であるが、最近は定刻に到着する場合もあり、以前より遅れが少なくなっているかもしれない。

カジノホテルから見たタイ側国境 オレンジ線が鉄道ルート 奥に巨大マーケットが見える  著者撮影

アランヤプラテート駅は国境ゲートから約6km西にあるため、トゥクトゥクで国境へと移動する。折り返しバンコク行きとなる列車に乗るために国境ゲートから移動してくる旅行者がいるので、駅前でトゥクトゥクを捕まえるのは難しくない。国境ゲートまで80バーツ、バンコクからアランヤプラテートまでの鉄道運賃は48バーツなので、不思議な気分である。国境ゲート近くには大規模なマーケットが広がっている。あまりに広大なマーケットなので電動カートを借りて回ることができる。商品の値段はバンコクのナイトマーケットより安いが、怪しいモノもちらちら見かける。

カジノホテルから見たカンボジア側 オレンジ線が鉄道ルート  著者撮影

アランヤプテート駅から国境ゲートまでの鉄道は、国際列車運行休止後もタイ国内だけの列車が運行していた。しかしその後廃止され、線路には草木が生えていたが、現在は真新しいレールが敷かれている。その線路は今回新たに架けられた国境の橋へと続いており、タイ国内はすぐにでも列車が復活できる状態となっている。実際、報道ではカンボジアへの直通列車が復活する前に、アランヤプラテート行きの列車をこの国境ゲート付近まで延長運転する計画もあるようである。もしそうなれば、トゥクトゥクでの移動が不要となり、国境を越えるバックパッカーにとって便利になるであろう。

さていよいよタイからカンボジアへの徒歩での国境越えである。ここの国境はやや複雑で、両国ゲートの間にはカジノホテルがあり、タイ側の出国ゲート、カジノホテル、カンボジア入国ゲートの順に歩いていくことなる。タイ出国手続きを終える通路を抜けると雑然としたカジノホテルの前に出る。その北側を見ると、先ほどタイのマーケットから見た国境の鉄道橋がある。カンボジア側の線路は橋からそのままカジノホテルの前を通り、ポイペトの街中へと続いている。鉄道が開通した時には、このカジノの間を列車が通り過ぎると思うと少しワクワクする。

カジノホテルの前に敷設されている線路  著者撮影

次にカンボジア入国である。タイは左側通行、カンボジアは右側通行のため歩行者は道路を渡って右側の歩道を歩いていく。ほどなくするとアライバルビザ発行と入国手続きをする建物があり、その中で入国手続きをする。

ここで不思議なのは、入国手続きをせずにこの建物の前を通り過ぎ、ポイペト市内へ向かう人が少なくないことである。カジノホテルとポイペト市内の間は事実上、自由に行き来できるようになっているのである。これはカジノホテルが厳密にはすでにカンボジア側に建っているからである。もちろん国境ゲートがノーチェックだからといって、カンボジア入国手続きをせずにポイペト市内に立ち入ることは不法入国となってしまうので、必ず入国手続きをするようにしたい。タイ側からカンボジア入国手続きなしで立ち入ることができるのは、カンボジア入国ゲートの手前のカジノホテルまで、と理解しておくのが正しいのであろう。実際、多くのタイ人が、カジノが禁止されているタイから一旦出国し、カンボジア入国手続きをせずカジノホテルを楽しんだ後、再びタイに入国している。普通の国境では入国の際、隣国の出国スタンプがないと咎められることがあるが、ここではそのようなことはないようだ。

国境前広場を通り過ぎたところで線路は途切れている  著者撮影

入国ゲートを通過すると広場があり、その真ん中に線路が設置されている。しかしその線路は広場の先で線路は途切れ工事中である。残念ながらまだ国際列車が走行するにはもう少し時間がかかりそうだ。報道では、当面、ポイペトから約50キロ東にあるバンティメンチェイあたりまで線路を復活させるようである。近い将来、バンコクからプノンペンまで1本の列車で移動できるようになることを夢見て今後の展開に期待したい。

タイ側の敷設済線路を歩く少年。彼が大きくなる頃にはプノンペン行列車が走っているだろうか  著者撮影

 
(text & photo : 井上毅)

 
バンコクから見る、東南アジア鉄道の楽しみ方
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