東南アジア
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旅に出る前に知っておきたい

私たちが知らない。世界遺産の本当の目的

旅の目的のひとつに、「世界遺産を見に行こう!」と考える人は多いのではないでしょうか。日本でも2013年に富士山が、2014年には富岡製糸場と、2年連続で2つの物件が世界遺産に登録され、今「世界遺産」に注目が集まっています。

東南アジアに目を向けてみると、現在登録されている世界遺産は37件。定番の観光スポットから、まだまだこれから人気がでそうな場所まで、各国に点在しています。

アンコール・ワットの夕映え ハッセル02J A3

しかし、「そもそも世界遺産って何だろう」 「何を基準に世界遺産って決まるのか」…ということを、私達はどれだけ知っているでしょうか?
そこで、旅に出る前に知っておきたい「世界遺産って何?」を学ぶべく、世界遺産への理解や保全活動の一環として、「世界遺産検定」(文部科学省後援)を主催するNPO法人世界遺産アカデミー主任研究員の目黒正武氏にお話しを伺いました。

 

「世界遺産」を学ぶことは「戦争のない平和な世界の実現」につながる

アンコール・ワット内部 16J

2005年にNPO法人世界遺産アカデミーが設立され、2006年から「世界遺産検定」がスタート。2014年現在、受検者は年々増え続け、その年齢層も多岐にわたると言います。そして「世界遺産」の位置づけは、単なる「観光」「旅行」といった枠を超えている、と目黒氏は言います。

「設立当初は年1回の検定だったのが、今は年4回、年間2万人規模にまでなり、世界遺産への興味、注目はますます高まってきています。受検者は小学生から90代の方までと幅広く、男女比は4:6で女性が多め、10~30代が8割をしめています。」
アンコール遺跡群タ・プローム 07J

なぜ、こんなにも多くの人々が世界遺産に興味を持ち、世界遺産を通して教養や倫理観を学ぼうとするのか。それは、「世界遺産が何のためにあるのか」に通じています。ユネスコで採択された世界遺産条約には「どの国や地域の人でも、いつの時代のどの世代の人でも、どんな価値観をもつ人でも、同じように素晴らしいと感じる価値を人類共通の財産として大切に守り、受け継いでゆく」とあります。これが本来の世界遺産の意義なのです。

「ユネスコの目的は国際平和の構築なんですね。世界遺産を通して相手の文化に興味を持てば、知らなかった人達との会話が始まり、相互理解が高まれば戦争はなくなるだろうという考え方。旅行客が世界遺産を傷つけた、というニュースもありましたが、遺産価値を知り、その国や人を理解すれば、遺産を壊すことはしないだろうと思うんです。また、英語を勉強したくないという子供が多いとも聞きますが、それは「海外に興味がないから」なのではないでしょうか。

アンコール遺跡群パンテアイ・スレイ 09J

世界遺産を学び、先に海外の興味を誘ってあげれば、コミュニケーションの手段として「英語もやっておこう」という形になるでしょう。実際、小学生達の所に講演へ行くとみんな目をキラキラさせて話を聞いています。世界の平和を目指すための手段としてこんなにも考え抜かれた「世界遺産」というものがあるのだから、これからもみんなで共有すべきじゃないのだろうかと思っています。だからこそ、より多くの方にも世界遺産について知ってほしいと思いますね」

アンコール・ワットの早暁 ハッセル 06 J
次回は、「東南アジア特有の世界遺産について」と「世界遺産を深く知るなら「登録基準」で見よう」について目黒氏にお話を伺います!!

© all photos to Sumio Koizumi

(text:Tomomi Kimura)

 

PROFILE
目黒正武 MEGUROMasatake

NPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員。明治大学商学部卒。旅行会社に就職後、国内外多数の世界遺産で現地経験を積む。2005年より現職。青山学院大学・文化学園大学・八洲学園大学非常勤講師。メディア出演:TBS『みのもんたの朝ズバッ!』、テレビ朝日『そうだったのか!学べるニュース』、フジテレビ『知りたがり!』、フジテレビ『アゲるテレビ』等で世界遺産について解説。

 
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