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- スタジアム建設ラッシュの東南アジア各国、その理由とは…
2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設問題が世間をにぎわせている。当初1300億円とされた総工費が実際には2520億円にまで膨れ上がり、高額すぎるコストに批判が噴出。結果、計画はゼロベースで見直されることが発表され、今後の展開が注目されている。
東南アジアでは今、各国で新スタジアムが相次いで誕生している。
東南アジアでもスポーツの国際大会開催へ向けてスタジアムが建設されることは多く、各地で新スタジアムが生まれるひとつの要因となっている。なかでも、「東南アジアのオリンピック」と呼ばれる東南アジア競技大会(SEA Games)のホスト国で新スタジアムが建設される例がよく見られる。
近年では、2009年大会で初めて同大会のホスト国となったラオスが、ニュー・ラオスナショナルスタジアム(25,000人収容)をビエンチャン郊外に建設。2013年大会を誘致したミャンマーは、首都のネピドーにウンナ・テイディスタジアム(30,000人収容)を完成させた。ビルマ時代にはホスト国を2度務めたことのあるミャンマーも、民政移行後はこれが初めての開催だった。
中国資本によって作られたラオス・ニューナショナルスタジアムは、複数のスポーツ施設からなる「ラオス・ナショナルスポーツコンプレックス」の一施設として作られた。収容2万5千人のスタジアムの他にも、水泳場、テニスコート、射撃場なども併設されている。総建設費は9800万ドル(約122億円)と、日本と比べるとずいぶん割安といえる。
サッカーのFIFAワールドカップ・ロシア大会のアジア予選で、11月に日本のアウェイ戦が行われる予定の2つのスタジアムも、もともとは東南アジア競技大会へ向けて作られた。日本がアジア2次予選で同グループに入っているカンボジアのプノンペン・オリンピックスタジアム(50,000人収容)と、シンガポールの新ナショナルスタジアム(55,000人収容)だ。
シンガポールの新ナショナルスタジアム AFF-Suzuki-Cup-2014 ©Sport Singapore
東南アジア競技大会の歴史を振り返ると、カンボジアがホスト国を務めた記録は見当たらない。実は当初、カンボジアは1963年大会のホスト国を務めることになっていたのだが、ベトナム戦争の影響下にあった当時、カンボジア国内の情勢不安によって大会は中止されてしまった。その「幻の大会」へ向けて建設されていたのが、プノンペン・オリンピックスタジアムだった。
一方のシンガポール・ナショナルスタジアムは、今年開催された東南アジア競技大会のメイン会場として昨年完成したばかり。総合スポーツ・娯楽施設「シンガポール・スポーツハブ」を構成する施設のひとつとなっている。世界最大の開閉式ドームスタジアムとしても注目されており、同エリアに水泳競技場や室内アリーナ、ウォーター・パークや商業施設なども併設されている。総事業費は、約13億シンガポールドル(約1170億円)が費やされた。
東南アジア各国におけるスタジアム建設の背景
今、東南アジアでスタジアムが次々と生まれているのには、もう一つ背景がある。経済の成長とともに、各国のサッカーリーグが一気に盛り上がり始めているためだ。近年、世界で最も多くの日本人選手がプレーする海外リーグとして脚光を浴びているタイリーグを筆頭に、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどもここ数年で国内リーグが形をなしてきた。
タイでは現在、東南アジア最強のクラブとして日本でも知られるようになったブリーラム・ユナイテッドのニュー・アイモバイルスタジアムを筆頭に、近代的なハードを備えたスタジアムが急増中。これまではホームスタジアムを持つクラブ自体がほとんどなかったカンボジアやラオスでも、クラブ所有のスタジアムが次々に建設され始めている。
東南アジアに新しく生まれたスタジアムの多くに共通するのは、あまり立地がよくないこと。周囲には何もないようなエリアに存在することもある。だが、現地の人々はほとんどが車やバイクを利用するため、必ずしもアクセス面の悪さが観客動員を妨げてはいない。実際、東南アジア最強を誇るブリーラム・ユナイテッドのスタジアムなども、立地はいいとは言えないものの平均観客動員数はリーグトップの2万人超だ。
スタジアムに人が集まれば、周辺環境も徐々に変化していくだろう。「建設ラッシュ」が始まったスタジアム事情からも、今の東南アジアの勢いを実感することができる。
(text : 本多 辰成 )
スポーツコラム「スポーツが繋ぐ! 東南アジアと日本の新時代」
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