ASEAN
カルチャー
サッカーが繋ぐ日本と東南アジア

加速する日本サッカーの東南アジア進出

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昨年のサッカー・ワールドカップはバンコクで見ていた。タイを拠点にして4年目、ワールドカップ期間を海外で過ごしたのは初めてのことだ。

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周囲にはヨーロッパ人もいる環境だったため、毎朝、挨拶代わりに自国の代表チームへの喜怒哀楽を語り合うのは楽しい時間だった。

 

タイを評して「親日国」とよく言われる。それはタイに住んでいると折りに触れて感じることで、このワールドカップの時もそうだった。日本の試合は朝の早い時刻に行われたにも関わらず、タイの人たちは日本戦がある度にこんなふうに声をかけてくれた。

「今日は日本を応援するために早く起きたのに、負けてしまって残念…」

タイがワールドカップに出場していないのもあるのだろうけど、異国の代表チームにそこまで肩入れする姿は不思議な感じすらした。街では日本代表のユニフォームを着たタイ人の姿も目にしたし、長くタイに滞在する日本人によれば、日本戦が夜に行われる場合にはスポーツバーなどでも自然と日本を応援する空気が生まれるという。

 

今、サッカーの世界で、日本と東南アジアがかつてないほど強くつながり始めている。「アジア戦略」と銘打たれたJリーグによるアジア進出や、東南アジアのリーグでプレーする日本人選手の増加によってだ。

1993年にスタートしたJリーグは、創設から20年の節目にアジアへの展開を開始した。日本サッカーに大きな成長をもたらしたメソッドをアジアの国々に還元することで、アジア全体のレベルアップを図る。さらに、ヨーロッパへ流れている巨額の放送権料などをできるだけアジア内で還元できるようにする、といったビジネスの視点も含まれている。
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Jリーグがまず注目したのが東南アジアだった。タイのプロリーグ「タイ・プレミアリーグ」を皮切りに東南アジア各国のリーグと提携を結ぶと、現地出身Jリーガーの排出にも尽力して、すでにベトナムやインドネシア出身のJリーガーが誕生している。

一方で、東南アジアのリーグでプレーする日本人選手も近年、急激な勢いで増えている。特にタイでは年々増え続けて、昨年は60名以上もの日本人がタイリーグでプレー。今や世界で最も多くの日本人がプレーする海外リーグとなっている。その波は、カンボジア、ラオス、ミャンマーといった周辺国へも徐々に波及し始めている。

 

こういった動きは東南アジアの急成長が基盤となっているが、それに加えてこのエリアの人たちの日本に対する好意的な見方も、それを支え、加速させている大きな要素だろう。それは、東南アジアのスポーツ現場を取材していても強く実感する。

タイのスタジアムでは、日本人選手が所属するチームの客席には必ず日の丸が掲げられている。競技は代わるが、一昨年にバンコクで開催されたバスケットボールの女子アジア選手権でも、タイ人やタイ在住のフィリピン人らが日本側の応援席でわざわざ持参した大きな日の丸を振る姿に驚かされた。
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かつて、東南アジアはサッカーが強かった。アジア王者を決めるアジアカップの歴史を見ても、遡ればビルマ(ミャンマー)やタイなど東南アジアの国々が上位に顔を出している。ところがこの20年で日本は急成長、立場は逆転した。その成長を実現させた要素を日本から学びたいという素直な思いが、東南アジアのサッカー界から感じられる。

日本にとっても、世界で勝つためにはアジア全体が強くなることが必要だ。日本人とは全く違う価値観を持った人たちが生きるアジアの地で多くの日本人選手がプレーすることで、お互いにさまざまな化学変化も期待できるだろう。

 

政治や経済だけでなくスポーツでも、今後ますます価値あるパートナーとなっていくはずの日本と東南アジア。一年一年、確実に成長していく東南アジアと、形を変えながら進化していく日本との関係性。それを今、もっともリアルに感じられるのがサッカーの世界かもしれない。

 

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