インドネシア
観光
1度は体験したい!贅沢な列車の旅

ジャワ島でSLをチャーターして自分専用の列車を走らせよう

写真6
途中駅でSLの付け替えを行う (著者撮影)

ボロブドゥールの夜明けは息を飲むような美しさだった。遺跡内のホテルを夜明け前に出て、遺跡の上で夜明けを待つ。少しずつ明るくなるにつれムラビ山が霧の向こうに浮き上がってくる、そんな幻想的な景色だった。

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写真1
ボロブドゥールの夜明け (著者撮影)

しかし、鉄道愛好家にとってボロブドゥールの遺跡と同じぐらい魅力的なのが、この遺跡の60キロほど北、アンバラワという街にある鉄道博物館。ここでは僅か3万円程度のチャーター料で、自分だけのSL列車が運行できる。花より団子、遺跡よりSL。遺跡観光もそこそこにして、車でアンバラワを目指した。

アンバラワは、ジャワ島のほぼ中央に位置する内陸の小さな町。現在、鉄道で行くことはできないが、1970年頃まではジャワ島を南北に縦断する鉄道路線があり、アンバラワには駅も設置されていた。その駅にインドネシアの様々なSLを集めて展示してあるのが「アンバラワ鉄道博物館」である。展示しているSLは20両以上にもなり、かなり規模の大きい博物館である。

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鉄道博物館(もとアンバラワ駅)(著者撮影)

保存されているSL中には構造がかなり特殊なものもあり、それらを見て回るだけでも楽しいのだが、何といってもこの博物館の魅力はSLをチャーターして自分専用の列車を走らせることができることである。但し、チャーターには事前申込みが必要で、また運転ができない日もあるようである。博物館との連絡は往復の車の手配と併せて現地旅行社に依頼するのがよいだろう。列車を走らせることができるのは、アンバラワ駅から2駅、約9キロの区間。現在、この区間を走行している列車はこのチャーター列車のみである。途中の停車時間なども含め往復で2時間程度のミニトリップである。

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発車前のSLチャーター列車 (著者撮影)

博物館に到着すると、係りの人が「あなだが今日の列車のオーナーですね」というような雰囲気で駅の事務所へと案内してくれる。暫くすると、蒸気の音をたてて機関車と客車2両の「専用列車」が到着、早速乗り込むこととする。「専用列車」ではあるが、地元の子供も何人か乗車している。どうも近くまで乗りたいようで、わざわざ降りてもらう必要もないので「オーナー」として乗車を黙認することとする。沿線の踏切には青い服を着た係りの人が立ち、人が通行しないように確認してくれている。この係りの人は、次の踏切にもちゃんと立っていた。どうもバイクでこの列車を先回りして、すべての踏切の安全を確保してくれているようである。

写真4
チャーターでしか走らない列車は注目の的 (著者撮影)

 
列車はアンバラワの町を抜けると、のどかな南国の田園風景の中を走る。こういう景色にはSLが合っている。

写真5
のどかな田園風景が広がる車窓 (著者撮影)

途中の駅でSLを付け替え、客車が前、SLが後ろになる。これは急な坂を上るためには機関車が後ろの方がよいためである。さらに急な坂の区間になると2本のレールの間に金属の梯子のようなものが設置されている。ラックレールという歯車の力を使って坂を上る非常に珍しい設備で、日本でもの静岡県の大井川鉄道にしかないものである。そのためこのSLも内側に歯車がある特殊な構造になっている。列車は歯車の音を軋ませながら懸命に坂を上っていく。

写真6
途中駅でSLの付け替えを行う (著者撮影)

写真7
(著者撮影)

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ラックレール区間の坂を上る (著者撮影)

坂を上り切ったところが終点のベドノ駅。この駅では頑張ったSLの喉を潤してもらうため給水を行う。SLが一息ついたら出発、もとの線路を今度はアンバラワへと下っていく。

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ラックレールの構造(鉄道博物館の展示)(著者撮影)

途中、少年が列車の後ろを板で作った乗り物で追いかけて来た。ラックレールを使って坂を下る乗り物を自作したものであろう。最初は衝突するのではと心配するような勢いだったが、平地になると列車との距離がどんどん離れていき、やがて少年の姿も見えなくなった。

写真10
自作の乗り物で列車を追走 (著者撮影)

蒸気機関車は、電車のようにすぐに走らせることはできない。列車を走らせる何時間も前からボイラーに火を付けて蒸気圧を高めておく必要がある。ピストンのように動く部品も多く保守には多くの手間がかかる。それでも、このインドネシアの山奥でSL列車を運転してくれるのは、単に観光客を集めるためだけでなく、運転に係る人たちがSLに愛情をもって接してくれているからであろう。その人たちに改めて感謝し、アンバラワの街を後にした。

 

(text & photo : 井上毅)

 
バンコクから見る、東南アジア鉄道の楽しみ方
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