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- 観光前に読めばもっと楽しめる!世界遺産「ボロブドゥール」を解説
photo:世界遺産イェーイ!
インドネシア、ジャワ島の世界遺産「ボロブドゥール」は1,814年に発見されるまで1,000年以上も密林ジャングルの中に埋もれていたミステリアスな遺跡。2017年11月に日本語ガイドさんと一緒に遺跡を観光してきた筆者が、かなり詳細な情報を、雰囲気のある写真と共にご紹介します。
多くの謎が残ります!仏教寺院ボロブドゥールの歴史
ボロブドゥールがあるインドネシアのジャワ島は、「海のシルクロード」とよばれる海上交易ルートの要所であったため、古代より政治経済の中心地として繁栄していました。現在の首都ジャカルタもジャワ島にあります。
photo:世界遺産イェーイ!
紀元前5世紀ごろ、インドの釈迦の教えによって起こった仏教は、インドからアジア全域に広がりジャワ島には、インド→スリランカ→スマトラ島を経由して大乗仏教が伝わりました。
ボロブドゥール寺院は8世紀に誕生した大乗仏教を信仰する「シャイレンドラ朝」によって約50年かけて作られました。その後まもなくジャワ島ではヒンドゥー教を信仰する人々が増えたからか、大乗仏教は衰退。1006年にはムラピ山が噴火し、ボロブドゥールは火山灰に埋もれて小高い丘のようになったと言われています。シャイレンドラ朝が短命だったこともあり文献が残っておらず、とにかくボロブドゥールの歴史は謎に満ちています。
ムラピ山 photo:世界遺産イェーイ!
約1000年の時を超えて1814年、当時ジャワ島を統治していたイギリスのラッフルズが丘を掘り起こして遺跡を発見!遺跡の状態は悪く発掘は困難を極めたのですが、1973年から1983年にかけて日本を始め世界中から25億円もの援助を受けてユネスコ主導で大規模な修復工事を行い、現在のような姿になり1991年に世界遺産に登録されました!
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ボロブドゥールの外観
他の仏教寺院のように中に入る空間がないのが特徴
ピラミッド型のボロブドゥールは、小高い山を柔らかい安山岩で覆って作られています。遠くから見るとまるで山のような姿をしており、富士山のように山岳信仰の対象であったとも考えられています。
一辺の長さが約120m、高さは約38mと巨大!実は昔はもっと高さがあり42mだったのです。先端に「相輪(そうりん)」と呼ばれる金具のようなものがあったのですが、1925年の落雷で崩壊し高さが低くなってしまいました。
菩提樹の葉っぱ photo:世界遺産イェーイ!
入り口となる東門近くにはインドから伝わってきたとされる菩提樹の木があります。ボロブドゥールも菩提樹の葉っぱをイメージして作られたそう。釈迦は菩提樹の下で悟りを開いたと伝えられています。
外観 photo:世界遺産イェーイ!
もとからあった山に土を盛ってその上に石を積み上げて作られているので、内部に入れないのが最大の特徴。崩壊の恐れがあったためユネスコの修復では丘を覆う全てのブロックを取り外し、コンピュータで石の一つ一つを管理。丘をコンクリートで補強して、その上にブロックを組み直しました。
大乗仏教の宇宙観を表す構造
遺跡近くのマノハラ・ホテルにある模型 photo:世界遺産イェーイ!
ピラミッド状の寺院の下から基壇、方形壇、円形壇の3層に分かれるボロブドゥールは、大乗仏教の宇宙観である3種類の世界「三界」を表しているとされます。
・基壇(欲界) ⇒ 煩悩に満ちた世界
・方形壇(色界) ⇒ 欲望はなくなったがまだ肉体が存在する世界
・円形壇(無色界) ⇒ 肉体を離れ精神だけの世界
このように上に行くほど仏教の悟りに近づけると言われています。
ボロブドゥール:基壇
欲望にとらわれた者が住む「欲界」
まずは、最初に土台となる基壇からご紹介します。ここでぜひ見て頂きたいのが南東角にある「隠れた基壇」です。
隠れた基壇 photo:世界遺産イェーイ!
1885年、基壇の後ろに隠れていたもうひとつ基壇が見つかりました。最初に作った基壇が小さすぎたためにもっと大きな基壇で覆ったとか、建設中に地盤が崩れて基壇を補強するために埋められたとか色々な説があります。
発見された「隠れた基壇」には、レリーフが残されており欲望のまま生きる醜い人間の姿が詳細にえがかれています。
噂話をする女性達 photo:世界遺産イェーイ!
こそこそと噂話をする女性のレリーフ。上部にはサンスクリット文字で「ウィルパ」と書かれた文字が残されています。
サンスクリット文字 photo:世界遺産イェーイ!
「ウィ」は「悪い」という意味で、「ルパ」は「顔」を表します。つまり「悪い顔」という意味。良くない噂話をしているので口が猿のようにとんがっていて「悪い顔」になっているのが分かるでしょうか?
酔っぱらって踊る男性(真ん中) photo:世界遺産イェーイ!
男性の悪い習慣「飲む、打つ、買う」を描いたレリーフ。お酒を飲んで踊る姿や、麻薬や女を買う姿、サイコロをふる姿などが詳細に残されています。
入り口から入って、南の方へ進んだ角にあります。基壇と隠れた基壇の構造が分かりやすくなっていますので、ぜひ行ってみて下さい。人間の欲望をえがいたレリーフは「昔も今も同じなのね。」とうなずくものばかり。ガイドさんと一緒にまわると、一つ一つのレリーフについての解説が聞けて楽しいです。
ボロブドゥール:方形壇
欲望はなくなったがまだ肉体が存在する世界「色界」
基壇から第1回廊への階段を上り建物の中に入っていきましょう。方形壇は第1回廊から第4回廊まで4層構造になっており仏教にまつわる物語のレリーフが施されています。
第1回廊の上段には、釈迦の生涯のレリーフが施されています。回廊の下段には、釈迦の前世の話などが描かれています。
天界にいる釈迦の図 (東面) photo:世界遺産イェーイ!
釈迦が生まれる前の図。中央は天界にいる釈迦(菩薩)です。
釈迦の両親 (東面) photo:世界遺産イェーイ!
保存状態の良い釈迦の両親。右が釈迦の父親である「シュッドーダナ」。左が母親の「摩耶夫人」です。
摩耶夫人受胎 (東面) photo:世界遺産イェーイ!
摩耶夫人は、白い象が天海から降りて来てお腹の中に入る夢を見ます。左上にあるのが象です。
象(東面) photo:世界遺産イェーイ!
象だけ拡大してみました。柔らかい安山岩で作られているため、頭の部分が壊れていますが、右向きで鼻が少し残っています。
里帰りする摩耶夫人(南面) photo:世界遺産イェーイ!
摩耶夫人は馬車に乗って出産のために里帰りをしました。その道中ルンビニの公園で釈迦が誕生します。
釈迦誕生の場面 (南面) photo:世界遺産イェーイ!
真ん中にあるのが沙羅双樹の木で、その右側に立つのが摩耶夫人。釈迦は、生まれてすぐに7歩、歩いたとされます。
以上誕生までのレリーフは、東面と南面にあるので、階段がある東面から近く観光しやすい場所にあります。すべてを見ると結構時間がかかるので、時間がない時は見やすいレリーフに絞って観光するのも一案です。
普賢菩薩に頭をなでられる善財童子(第4回廊東面北側) photo:世界遺産イェーイ!
第2回廊から第4回廊にかけては、大乗仏教の経典に登場する「善財童子」が53人の賢者を訪ねるという壮大な旅物語が彫られています。
ヒンドゥー教の神、シヴァ神 (第2回廊北面東側) photo:世界遺産イェーイ!
善財童子が訪ねた賢者の1人シヴァ神。よーく見ると聖なる牛ナンディに乗り、三又の鉾を持っています。
ボロブドゥール:円形壇
肉体を離れ精神だけの世界「無色界」
photo:世界遺産イェーイ!
いよいよ頂上まで近づいてきました。円形壇への入り口は門があり、上部には魔を払うと言われている「カーラ」の彫刻があります。
photo:世界遺産イェーイ!
円形壇は、3層の円壇に下から32、24、16と合計72個の釣り鐘型のストゥーパが並び、それぞれに仏像が入っています。円形壇にはレリーフはありません。
photo:世界遺産イェーイ!
こちらは見学用に仏像を露出させたストゥーパ。写真を撮る人でいつも賑わっています!よく見ると格子窓の形が、ひし形と正方形の2種類あるのがわかりますか?
下2段はひし形 photo:世界遺産イェーイ!
上段は正方形 photo:世界遺産イェーイ!
穴がひし形のストゥーパは、人々の不安定な心を表し、正方形のストゥーパは安定した賢者の心を表します。中心へ行くほど仏教の真理へと到達できるのです!
大ストゥーパ photo:世界遺産イェーイ!
円壇の頂上にそびえる大ストゥーパ。最初に記載しましたが、大ストゥーパの先端には「相輪(そうりん)」と呼ばれる金具がありましたが、1925年の落雷で崩壊。現在は避雷針がついています。
大ストゥーパには格子窓がついていません。窓のない「無の世界」なのです。ここまで登ると、仏教の真理へ到達したことになります。
ボロブドゥールの仏教寺院群 (文化遺産)
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・登録:1991年
・登録基準:「人間がつくった傑作」「文化交流」、「出来事や宗教、芸術」
・アクセス
日本から首都ジャカルタ、またはバリ島のデンパサールまで直行便で約7時間。ジャカルタ、またはデンパサールからジョグジャカルタまで飛行機で約1時間。ジョグジャカルタからバスで約1時間半。
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