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カルチャー

【旅予習MOVIE】香る、ベトナム5選

蒸し暑く、ジメジメとした梅雨の時期の映画鑑賞には、しっとりとした恋愛映画がよく似合う。そこで、今回の「旅予習MOVIE」では、ベトナムの香りを感じさせる映画5選をご紹介。戦争や身分の格差、貧困などの過酷な背景にしながらも、たくましく生きる人々、特にヒロインの凛々しさが光る作品の数々。そこに映し出される情感あふれる街並みや生活の営みもまた、あなたの旅情を誘うはず。

 

■In Ho Chi Minh: ホーチミン市(旧サイゴン)

1.『青いパパイヤの香り』(1993年)

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ベトナム映画と言えば、本作を一番に挙げる人が多いのではないだろうか。フランス在住越僑のベトナム人監督、トラン・アン・ユンがその名を知らしめた、言わずと知れた傑作。10歳のときに商家に奉公に出された少女・ムイが、心優しい女主人に見守れながら、一人の女性へと成長する姿が描かれる。

 

残念ながら、撮影は全てパリのスタジオで行われているため、実際のロケ地はベトナムには存在しないが、50~60年代のサイゴンを舞台にした住居や商店の様子は、セットとは思えない程リアルな空気感が再現されている。また、とりわけ心惹かれるのが女性たちが着るアオザイ。ベトナムの伝統衣装であるアオザイは、時に女主人が妻・母として健気に振る舞う姿を引き立たせ、時に大人に成長した少女の色気を象徴するものとして映る。女性旅行客もオーダーメイドしたり、着用したりと人気の高いアオザイだが、実はその歴史を広く伝える「アオザイ博物館(Bao Tang Ao Dai」が今年1月、ホーチミン市9区にオープン! その変遷を深く知れば知るほど、アオザイの虜になるかも?

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【おすすめスポット】

アオザイ博物館:http://baotangaodaivietnam.com

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『青いパパイヤの香り ニューマスター版』DVD

発売元:カルチュア・パブリッシャーズ/販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

価格:¥3,800+税

 

2.『地球でいちばん幸せな場所』(英題『Owl and the Sparrow』/2007年)

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ベトナム発の映画を観られる機会がまだまだ少ない中、現代のベトナムのドラマを描いたものとして、高い注目を集めた本作。5歳でアメリカに移住したホーチミン生まれのステファン・ゴーガー監督は、両親を亡くした10歳の少女が見知らぬこの大都市の路上で、生活の糧であるバラをきっかけに2人の大人たちと絆を育んでいく姿を描いている。

 

バイクが忙しく行き交い、夜もネオンが灯り活気づいているホーチミン市のエキゾチックな魅力、そしてリアルな息づかいを、大人になって街の大変化を目の当たりにした監督はめいっぱい詰め込んでいる。そんな中で、自分の信じた道を突き進み、人々を巻き込んでいく図太さがある主人公・トゥイが、お節介仲人のように2人の男女を結びつけるスポットも見逃せない。市民の憩いの場であるサイゴン動植物園や、多くの店がひしめくHai Ba Trung通りにある羊鍋が美味しいレストラン(トゥイは大人に「私の奢りよ!」と口説いちゃう)など、彼女の手にかかればデートスポットに変身! 愛おしいキューピットに導かれながら、いまのホーチミンの街を巡ってみるのはいかが?

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【登場スポット】

サイゴン動植物園、タンソンニャット国際空港、レレ・ホテル、オウ・ラック・サイゴン・ホテル、Nha Toiレストラン etc

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『Owl and the Sparrow』DVD

販売元:RLJ Entertainment

※Amazon.comなどで英語版のみ販売中

 

3.『季節の中で』(1999年)

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『地球でいちばん幸せな場所』のゴーガー監督も撮影チームに参加している『季節の中で』の監督、トニー・ブイもまた幼い頃に離れた故郷サイゴン(ホーチミン市)への想いをフィルムに収めた一人。弱冠26歳にして、本作でサンダンス映画祭を制覇する快挙を遂げた。

 

蓮摘みの仕事を始めたばかりの若き女性と病に置かされた屋敷の主人、偶然出会ったシクロの運転手と娼婦、生き別れになった娘を探しに来た元米兵と路上で暮らす少年、3組の人々が織りなす物語が、熱帯国の季節感と共に描かれる群像劇。ちょうどこれから夏にかけて見頃のベトナムの国花、蓮の美しさも季節感を演出している。自然の蓮が見られる場所では、ハノイの西湖(蓮湖沼)やフエのトゥドゥック帝廟の蓮池などが有名で、蓮と一緒に写真撮影するのはこの季節のローカルな行楽として親しまれているとか。また、蓮と並んで本作で存在感が大きいのが庶民の足、シクロ(自転車タクシー)。劇中にも、愛する女性のために男の勝負を賭けてシクロのレースに挑む男の姿が描かれるが、実際に貧困層の子供たちに向けたチャリティ・レースが毎年3月、ホーチミン市7区で行われ、個性的な装飾を施したシクロが肩を並べる。今年は既に終了しているが、時期が合えば観戦するのも楽しそう。

※ベトナム名物の乗り物「シクロ」の現地レポーター情報はこちら!

【登場スポット】

アポカリプス・ナウ・バー、マーキュリー・ホテル、ハーバービュータワー etc

 

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『季節の中で』DVD

販売元:パラマウントジャパン

価格:3,980円+税

 

■In Hanoi: ハノイ

4.『夏至』(2000年)

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『青いパパイヤの香り』から7年を経て、トラン・アン・ユン監督が初めてハノイで撮影を行った作品。母の命日に集まる仲良し三姉妹とその家族だが、それぞれ人には言えない“秘密”があり…。男女の愛と秘密の情事が描かれており、艶感をたっぷり含んだ女性たちの美しさに思わずうっとりさせられる。

 

本作で度々登場するのは、ハノイ随一の観光スポットでもある旧市街。ホアンキエム湖の北側に広がるエリアで、レストランやカフェ、お洒落な雑貨屋が多く並ぶ場所だ。その一角にある老舗カフェ「Cafe Lam(カフェ・ラム)」で、三女リエンが恋人を待つシーンもまた美的センスが光る場面。壁には様々な絵画が飾られており、ベトナムコーヒーやお茶をすすりながらおしゃべりを楽しむ人々で常に賑わっている人気店である。また、長女スオンの夫が妻に隠している“秘密”のために訪れるハロン湾も、ベトナム随一の世界遺産として人気の高い観光スポット。ハノイから車で約3時間半の距離にあり、日帰りのクルーズツアーも多くあるが、街中だけでなく大自然の景観を満喫したいという方はここで数泊過ごすのもいいかもしれませんね。

 

【登場スポット】

ハノイ旧市街、カフェ・ラム、ハロン湾 etc

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『夏至』DVD

発売元・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

価格:¥3,790+税

 

■In Ho Chi Minh & Hanoi: ホーチミン市&ハノイ

5.『SONG OF THE STORK コウノトリの歌』(2001年)

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様々な愛の形を表現した作品が数ある一方で、この作品ではベトナム戦争を軸にした男女のラブストーリー、交錯する人々の想いが表現されている。実は、ベトナム人によって製作されたものとしては、海外で初めて正式に配給された本作。実際の映像を織り交ぜながら、当時を生きた人々のドラマを回想していく。

 

この作品で興味深いのは、敵味方だった者同士で当時を振り返るところや、置かれた状況が異なれど戦争という苦境を生き抜いた人々のそれぞれの視点を汲んでいるところ。戦後、いまの街の活気にたどり着くまでの道のりは映画を観るだけでは計り知れないものだが、ベトナムを訪れたなら、この歴史の1ページをたどりたい。本作にも登場する統一会堂(南ベトナム政権時代の大統領官邸)や戦争証跡博物館(ホーチミン市)などを巡るだけでも、より深くベトナムのことを知ることが出来るはず。

 

【登場スポット】

統一会堂(ホーチミン市)、エンペラー・レストラン(ハノイ)etc

 

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『SONG OF THE STORK コウノトリの歌』DVD

販売元:ファインフィルムズ

価格:¥3,800+税

 

(text: Izumi Kakeya)

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