香港
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フォトジェニックなアートスポットが続々!

“アートの街”香港で活躍するストリートアーティスト3組

写真提供:Elsa Jean de Dieu
ビクトリア・ハーバーとそこにそびえる高層ビル群のスカイラインが印象的な香港。こうしたイメージから、もしかすると香港は良くいえば都会的、あえていえば無機質な雰囲気も持つ街…と考えている方もいるだろう。

しかし実際の香港は、アジアのなかでも活気溢れるアートの街であることはご存知だろうか? 世界各地から集められた作品が鑑賞できる「香港芸術館」や、アーティストと一般の人々を繋ぐコミュニティ・アートスペースの「Oi!(油街実現)」、さらに2021年末に開館予定のヴィジュアル・カルチャー美術館「M+」は、そのほんの一例だ。

そこで今回は香港の人気ストリートアーティスト3組を紹介しつつ、香港の街を彩るアートについて触れていく。

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「日本とブラジルが融合した作品を」フランス出身アーティスト:Elsa Jean de Dieu氏


写真提供:Elsa Jean de Dieu
2008年からアジアで活躍してきたElsa Jean de Dieu氏は、香港を拠点に活動中のフランス人アーティストだ。香港や上海など世界中でストリートアートを制作している彼女の作品のなかでも、特に人気を集めるひとつがソーホーのピール・ストリート(卑利街)にある。


写真提供:Elsa Jean de Dieu
作品のキャンバスとなったのは、ブラジルスタイルの和食レストラン「Uma Nota」。オーナー夫妻がブラジルと日本、2つの文化を融合させたウォールアート制作者を探していたことが、この作品が生まれるきっかけとなった。Elsa氏は喜びやエネルギーに満ちたブラジル人女性を色鮮やかに描きつつ、淡いピンクの外壁で日本の桜をイメージさせ、さらに作品とレストラン双方をリンクさせるためにイチョウの葉も散らしている。

「最初は地元の人々に自分の作品が受け入れてもらえるか、不安だった」というElsa氏だが、作品は瞬く間に注目を集めるフォトスポットに。本作のほかにもそこかしこにアートが根付くソーホーは、Elsa氏もお気に入りのスポットとのこと。「街中にできるだけ多くの笑顔を描くことで、自分のアートを通しポジティブな気持ちを広めていこうと決めた」と語る彼女の作品をぜひソーホーへ観に行ってみよう。

 

「都会のなかに自然を描く」“クリエイティブ・ハスラー”:Carol Mui氏、Rebecca T Lin氏


写真提供:Carol Mui and Rebecca T Lin
自然の美しさに重点を置き、緑いっぱいのウォールアートを描くのがCarol Mui氏とRebecca T Lin氏だ。友人同士のふたりが生み出す作品は、幻想的な街並みのなかに植物が描かれているのが特徴。Carol Mui氏が掲げる哲学 「スローダウン」をベースに、香港生まれのRebecca T Lin氏が抱く故郷と伝統へのこだわりを共存させていることが伝わってくるはずだ。なおふたりはインスピレーションを得るべく、珍しい植物などを探しにプリンス・エドワード(太子)にある「フラワーマーケット(花墟道)」を訪れたりもするのだそう。


写真提供:Carol Mui and Rebecca T Lin
クリエイティブ・ハスラーとして活躍する彼女たちは、2017年にウォールアートビジネスを開始してから、DBS、Lululemon、Pizza Expressといったさまざまな有名企業に制作で携わってきた。そんなふたりの人気作が、繊維工場から体験型施設へとリニューアルした「ザ・ミルズ(南豊紗廠)」だ。都会と自然、正反対の両者を描くという自分たちのテーマと、建造物として保存されながら人気施設に生まれ変わった「ザ・ミルズ(南豊紗廠)」に、重なる部分を感じたのだそう。工業風景のなかで美しい緑が映え自然を感じさせるアートとして印象深い。


写真提供:Carol Mui and Rebecca T Lin
作品は評判を呼び、マッチングアプリ「Tinder」のプロフィール背景にもなったほど。アート鑑賞としてはもちろんのこと、フォトジェニックなスポットとしても足を運んでほしい。

 

「地域と繋がる鮮やかなアート」現代都市アーティスト兼デザイナー:Szabotage氏


写真提供:Szabotage
現代都市アーティスト兼デザイナーとして活躍するイギリス出身のSzabotage氏は、オリジナリティに富んだ奇抜な作品で名を馳せる存在だ。東洋と西洋のインスピレーションを融合し、香港ならではのストリートアートの数々を手がける彼の元には、ルイ・ヴィトンやザ・リッツ・ カールトンといった有名企業からオーダーが入っている。


写真提供:Szabotage
人気の理由は、鮮やかな色彩と文化的表現が作品内に混在していることに加え、制作にあたって都市の建築物と地域社会との関係性を模索していることも挙げられる。例えば彼自身の家の壁に描いた巨大なロブスターは、この地域が「ロブスター・ベイ」と呼ばれていることからインスピレーションを受けた作品だ。この作品が地域住民から大きな反響を呼び、熱い要望を受けてこの地区2つ目のウォールアートである「パンサー(Village Cat)」が閑静な住宅地に描かれることとなった。


写真提供:Szabotage
彼の代表作のひとつともいえる「パンサー」では、この家の住人が猫好きであること、アクティブな家族たちから連想しスポーティ要素としてパドルボードを描いたこと、さらにクリアウォーターベイ(清水湾)に生息する野生動物に敬意を表し蝶をあしらっていることがポイントとなっている。


写真提供:Szabotage
そんなSzabotage氏が香港のストリートアートのなかでも気に入っているというエリアが、サイインプン(西營盤)だ。古い街並みと新しい街並みが合わさったこの場所は、ストリートアートの種類もスタイルも豊富で、Szabotage氏の代表作である鯉をモチーフにしたアートも多数点在。また周辺の通りも国内外のアーティストによるウォールアートで彩られ、ギャラリーにはストリートアーティストたちの作品がいくつも展示されている。著名なアーティストが香港を訪れた際には、ここに足跡を残すほど国際色豊かなアートの街だ。

3組ともウォールアート制作時には温かい言葉をかけられたり、差し入れをもらうこともあるという。そうして作品制作を通し、アーティストと地元の人々の交流が築かれているところも香港のアートシーンにおける魅力のひとつといえるだろう。



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