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【旅予習MOVIE】いま行きたくなる、インド5選

旅した者が「訪れてみて人生観が変わった」と口々に言う場所、インド。世界第2の人口を有する大国であり、多様な民族が暮らす中で、神々の信仰のもとに独自の文化と制度が継がれる国。人の数だけインドに対して抱くイメージがある。旅する前に見たくなる「旅予習MOVIE」では、様々な顔をもつ魅惑の国インドで生まれた傑作5本を紹介。観たらきっと旅情がぐぐっとそそられるはず!

 

1.『めぐり逢わせのお弁当』from ムンバイ

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まず最初にご紹介するのは、インド最大の都市ムンバイから届いた情感あふれるストーリー。多くの企業が本社を置き、多国籍企業も拠点を置くこのコスモポリタンシティでは、ダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人が大活躍。100年以上前からある職業で、昼時になると、彼らは家庭の台所から出来立ての弁当を集荷してオフィスに届けるのだ。その数5,000人で、配る弁当の数はなんと1日20万個。そんな中、“600万分の1”の確率で誤配送されてしまった弁当をきっかけに、夫の愛情を取り戻すために料理の腕を振るう主婦と早期退職を控えた男性、顔も知らない一組の男女の交流が始まる——。

 

慌ただしく人や車が行き交い、ラッシュ時の電車は東京顔負けの超満員となるムンバイの街。多忙ゆえに昼ご飯もバナナだけというビジネスマンも少なくないそうだが、だからこそ敢えて一手間かかる“お弁当”に思いを重ねたというリテーシュ・バトラ監督もこの街で育った一人。「ムンバイにはたくさんの都市がある」と話すように、異なる宗教や生活環境で暮らす人々が隣り合っている様子がキャラクターの描写からもうかがえる。そんな中で変わらず生活の一部となっている、おかずたっぷりのお弁当とそこに添えられた手紙から、ノスタルジックな人の優しさが伝わってくる。忙しい日々を過ごしている方にこそぜひ観てほしい、味わい深い作品である。

 

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『めぐり逢わせのお弁当』
シネスイッチ銀座ほか全国にて公開中
http://www.lunchbox-movie.jp
©AKFPL, ARTE France Cinéma, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC, Rohfilm―2013

 

2.『バルフィ!人生に唄えば』from ダージリン&コルカト

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アラビア海西岸に位置するムンバイから大きく北東に移動し、本作の舞台、ヒマラヤが望める小さな町ダージリンへ。高級茶葉の山地として知られ、インド有数の避暑地でもあるこの街で、主人公・バルフィは二人の女性と恋に落ちる。生まれつき耳が聞こえず、話もできないが、そのユーモアと豊かな表現力で感情を真っ直ぐに伝える心優しき青年・バルフィ。既に婚約者がいる身の美女・シュルティと相思相愛になるも、身分の差に阻まれ…。その後、彼は幼なじみの自閉症の女性ジルミルと再会し、ひょんなきっかけで二人きりの逃亡の旅へ出ることに――。

 

シュルティとのひと夏のラブストーリーの背景に映し出されるのは、雄大な山々が見えるタイガー・ヒルや街を縫う坂道の爽やかな風景。映画にこそ出てこないものの、ダージリンを訪れたならトイ・トレインの愛称で親しまれるアジア最古の登山鉄道、ダージリン・ヒマラヤ鉄道からの山岳景色も楽しみたい。また、本作のもう一つの舞台となるのが、南に約500キロ離れた大都会コルカタ(カルカッタ)。インドの民族運動が始まった土地でもあり、マザー・テレサが眠るマザーハウスがあることでも知られる街だ。道には車や牛、人力車などがごった返し、本作からも混沌とした街の熱気が感じられる。さて、この2つの街を舞台に展開される150分に及ぶ壮大ラブストーリーの結末は…ぜひ劇場でハッピーな気分に満たされて。

 

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『バルフィ!人生に唄えば』
8月22日(金)よりTOHO シネマズシャンテ、新宿シネマカリテほか全国公開
http://barfi-movie.com
©UTV Software Communications Ltd 2012

 

3.『スタンリーのお弁当箱』from ムンバイ

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グルメの宝庫でもあるインド。地方によっても主食が異なるが、マサラと呼ばれる多彩な香辛料を組み合わせて作る独特の料理に挑戦するのも、インド旅行の醍醐味の一つだろう。それで言うと、最初に紹介した『めぐり逢わせのお弁当』もそうだが、本作に登場するインド式弁当の数々を見れば、本場のスパイシー家庭料理を食べたくなること請け合い。

 

舞台はムンバイにある小学校。お昼になると、生徒たちは一斉にそれぞれのお弁当箱を広げるが、クラスの人気者スタンリーは家庭の事情でお弁当を持参できず、教室を抜け出して空腹を凌いでいた。そんな彼を見かねたクラスメイトたちは、自分たちのお弁当を少しずつスタンリーに分けて一緒に食べることになったのだが、食い意地の悪い教師が目を光らせていて…。ここで一致団結した少年たちと教師のコミカルな攻防も笑いを誘うが、何よりもみんなで仲良くお弁当を分け合って食べる姿に心洗われる。本作では、ごはんを題材にインドの児童労働という現実にも触れているが、みんなに笑顔が生まれるのもごはんを食べる時間。インドの父子(教師役のアモール・グプテは監督で、主演のパルソー君は実の息子)が贈る“おいしい”映画から、インドの日常風景を覗いてみては?

 

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『スタンリーのお弁当箱』
DVD発売中
価格:¥3,800+税
販売元:アンプラグド
stanley-cinema.com
©2012 FOX STAR STUDIOS INDIA PRIVATE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

 

4.『マリーゴールド ホテルで会いましょう』from ジャイプル&ウダイプル

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“神秘の国インドの高級リゾートホテル”で第二の人生を送るため、イギリスからやって来た男女7人。ところが、彼らを迎えるのは謳い文句とは程遠いボロホテルで…。その一人、夫を亡くし見知らぬ土地で人生で初めての一人暮らしを始めたイヴリンはブログに綴る。「あふれる音と色彩、暑さと喧騒、すさまじい数の人々」。その街とは、インド北西部に位置するラジャスタン州の州都ジャイプルである。

 

旧市街の市壁や建物が赤砂岩でできていて、街並みがピンク色に統一されていることから「ピンクシティ」とも呼ばれるジャイプル。美しい彫刻がテラスを埋め尽くす風の宮殿やシティ・パレスなど、歴史的建物がそのまま残されている。劇中にも登場する、無数の階段が巡らされたかつての貯水池(今は水浴に利用されている)も目を見張る美しさ! その美しい建築の数々と共にこの作品を物語るのが、またしても街の混沌とした景色。渋滞に飲み込まれたり、タクシー運転手に売春宿のようなホテルに案内されたり…なんていう一幕もあるが、一本路地を入れば布地や手工芸が並び、活気に満ちたバザールとの出会いがあり、ビビッドな色彩が刺激を与えてくれる。ちなみに、本作の第2作目『The second best exotic Marigold Hotel』が来年、全米公開。今度はどんな旅の物語が始まるのか、こちらも楽しみ。

 

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『マリーゴールド ホテルで会いましょう』
DVD発売中
価格:¥1,419+税
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
http://www.foxmovies.jp/marigold

 

5.『ダージリン急行』from ラジャスタン一帯

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広大な砂漠が広がるラジャスタンの魅力に取憑かれた旅人がここにも。初めてフィルムに捉えたインドを「どっちを見ても驚くばかり。いつだって何か滑稽なものがある」と表現するウェス・アンダーソン監督だ。彼は、宮殿が連なるラジャスタンの砂漠地帯を走る列車をキーアイテムにして、滑稽で切ない3兄弟のジャーニーを本作で描いた。

 

現地スタッフを総動員し、カラフルなラジャスタン式の文様と絵画を施し、実際にレールを走らせて撮った列車の旅。その出発点であるジョードプル、別名「ブルーシティ(旧市街が青色に統一されている)」で初めてインドに降り立った3兄弟を、何とも言えない異国の空気が包み込む。そして、窓から見えるのは、無限に続くような砂丘。予定通りに行かない珍道中に、口を開けばケンカばかりの兄弟…生と死が交錯するインドの大地を駆け抜けた先に、彼らがたどり着く場所とは――? 彼らのゴール地点である修道院の舞台に使われた、ウダイプルの元王族の狩猟用ロッジも見応えがあるので、どうぞお見逃しなく。ちなみに、ジョードプルのブルーの街並みを楽しむなら、ここを舞台にした韓国映画『あなたの初恋探します』もおすすめです。

 

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『ダージリン急行』
DVD発売中
価格:¥1,419+税
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

 

南北に長く延びる大陸につくられた街の数々。一口にインドと言えども、全く異なる街並みや熱気をそれぞれの作品から感じ取れるはず。個人的には、女性目線でインドの結婚を描いた『モンスーン・ウェディング』(下記写真)もおすすめの一本。そして、余談になるが、10月10日(金)からはインドの未公開映画を一挙上映する「インディアン・フィルム・フェスティバル」も開催されるようなので、もっとインドの魅力を深堀したいという方はぜひ足を運んでみてはいかが?

 

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『モンスーン・ウェディング』
DVD発売中
価格:3,800円+税
発売元:パノラマ・コミュニケーションズ/販売元:アミューズソフトエンタテインメント
©2001 mirabai films,inc.all rights reserved

 

「インディアン・フィルム・フェスティバル」

期間:2014年10月10日(金)~17日(金)<東京>

2014年10月18日(土)~24日(金)<大阪>

2014年10月18日(土)~24日(金)<群馬>

会場:ヒューマントラストシネマ(東京)、シネヌーヴォ(大阪)、シネマテークたかさき(群馬)

公式サイト:http://www.indianfilmfestivaljapan.com

 

(text:Izumi Kakeya)

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