タイ
カルチャー
東南アジアと日本の絆

バンコクの地下鉄、通称「ブルーライン」と深く関わる日本

今年8月、バンコクに新しい都市鉄道「パープルライン」が開業した。同路線はタイの都市鉄道では初めて日本製の車両が採用さられたことでも話題となったが、日本がタイの鉄道に関わるのはこれが初めてではない。将来的にパープルラインとの接続も予定されている地下鉄、通称「ブルーライン」にも日本は深く関わっている。

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ブルーラインが開業されたのは2004年のこと。世界的にも最悪に近いレベルにあったバンコク都心部の慢性的な渋滞を緩和し、タイの経済発展と生活環境の改善に寄与する目的で建設された。約27億ドルの建設費のほとんどは日本の円借款でまかなわれ、タイ、ドイツなどの企業とともに日本の複数の建設会社(大林組、鹿島建設、熊谷組、東急建設、西松建設)が建設を請け負った。

ブルーラインの建設は1997年にスタートし、当初は2003年のAPEC首脳会議へ向けた開通が予定されていた。だが、タイの通貨危機や用地の引渡しが遅れるなどのトラブルがあったために間に合わず。タイではよくあることながら施工計画の大幅な見直しが必要となり、翌年8月12日の母の日(シリキット女王誕生日)の開業を目指して工事は進められることに。結果的には、2004年7月3日に運行が開始された。

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建設にはさまざまな困難が伴った。プロジェクトは日本企業が設計施工を一貫して請け負ったため、地質はもちろん過去の気候などについても詳しく調査するところからスタート。バンコクは常に大規模な洪水のリスクを抱えているため、過去の洪水に関する情報も徹底的に収集され、地下鉄の入口を道路からどの程度上げる必要があるかといったことも緻密に計算された。周辺住民への配慮や地上の交通への影響を最小限に抑えることなども含め、日本ならではの仕事で工事は進められていった。

バンコクの高架鉄道BTSやエアポートリンク、そしてこのブルーラインにはすべて中国製かドイツ製の車両が使用されている。そのため、今回開通されたパープルラインが都市鉄道では初めての日本製車両となったわけだが、実はブルーラインも当初は日本製車両の導入が検討されていた。ところが、すでに開通していたBTSでドイツのシーメンス社製車両が使用されていたため、接続を可能にするため同じドイツ製の車両が採用されることとなったのだ。

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ブルーラインは現在のところ、全18駅で総距離は20.8キロほど。ともに国鉄駅と接続するフワランポーン駅とバーンスー駅の間を約30分で走行している。路線はタイ全土への旅の発着点となる国鉄のバンコク中央駅と接続するフワランポーン駅をスタートし、都心部のシーロム、スクンビット方面へ。そこから開発の進むラチャダーピセーク通りを北上し、ウィークエンドマーケットで有名なチャトゥチャック公園や北バスターミナルなどがあるエリアへと上っていく。

開業から12年が経過し、今では通勤、通学の足としても活躍するブルーライン。ラッシュ時にはBTS同様に大変な混雑となる。現状ではシーロム駅、スクンビット駅、チャトゥチャック公園駅がそれぞれBTSの駅と、ペッチャブリー駅がスワンナプーム空港と都市部を結ぶエアポートリンクのマッカサン駅と接続しており、近くパープルラインとの接続も予定されている。日本が深く関わってきた鉄道網は、今後ますますバンコクの人々の生活に欠かせないものとなっていくだろう。

DSC_0031著者撮影

ブルーラインの各駅では、タイ国旗と日の丸が並べられたプレートを目にすることができる。タイ語、英語、そして日本語も併記されており、日本の円借款によってプロジェクトが行われた事実とそれに対する感謝の意が刻まれている。ブルーラインを利用する機会があれば、バンコクの人々の生活に溶け込んだ日本とタイの絆の印をぜひ確認してみてほしい。

 
(text : 本多 辰成 )

 

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