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鍵はASEAN航空自由化の実現

ASEAN共同体の発足で海外旅行はどう変わる?

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photo:PIXTA

東南アジア諸国連合(ASEAN)共同体が2015年12月31日発足した。加盟10カ国の人口は約6億2000万人。EUを上回る巨大経済圏の誕生に、多くの人々が旅行やビジネスの活発化を期待している。

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しかし、ASEAN共同体が描く道のりは平たんなものではなく、多く課題があるのも事実。そこで今回は、ASEAN共同体とはどのような枠組みなのか、そして共同体誕生で東南アジア域内の旅行がどう変わるのかに焦点を当ててみたい。

 

そもそもASEAN共同体とは

ASEAN共同体とは、「経済」「政治・安全保障」「社会・文化」の3つの共同体からなる超国家的枠組み。

経済ニュースで良く目にするASEAN経済共同体(AEC)とは、これら3つのうちの1つ(経済)のこと。

AECが目指すのはASEAN域内を単一の市場・生産基地にすること。これを実現するためにASEAN先行加盟6カ国(インドネシア、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、タイ)の域内関税の大部分を撤廃し、後発4カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)でも2018年までに原則撤廃する見込みだ。

 
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©TRIPPING!  シンガポール マリーナベイ

しかし、域内の経済格差がまだ大きく、シンガポールやマレーシアなどの高所得国が低所得国の経済を飲み込むとの懸念がある。最も所得ギャップが大きいのがシンガポールとカンボジアで、一人当たりGDPは約52倍の差がある。

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©ASEAN-Japan Centre   カンボジア プノンペン

「経済」「政治・安全保障」「社会・文化」の3つのうち経済が先行しており、「政治・安全保障」「社会・文化」に関する枠組みは今後具体化される見込みだ。

社会・文化に関してはこのほどベトナムのグエン・タン・ズン首相が「ASEAN共同体」の一つ、社会文化共同体(ASCC)のマスタープランを承認したばかり(ベトナム通信)。同マスタープランでは2025年を達成目標年度としており、各省庁・機関、市・省などが年内に行動計画を策定する。

ASCCは、社会の格差是正、福祉・サービスの平等、人材育成、国民の健康への脅威に対する公共力の強化などを目指す。

「政治・安全保障」分野でもこれから具体的な施策が話し合われる予定だ。

 

フィリピンとインドネシアのASEAN航空自由化批准がカギ

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photo:PIXTA

ASEAN共同体発足で域内観光が活発化すると期待されていた理由は、AEC発足に合わせて域内航空市場が自由化される計画だったからだ。

しかし、フィリピンとインドネシアが航空自由化協定への批准を見送ったため、まだ実現していない。他の8カ国は批准している。

航空自由化が実現すると、自国から他のASEAN諸国のすべての都市に乗り入れが可能になる。現在、フィリピンはマニラ以外の都市、インドネシアはジャカルタのみに乗り入れを限定している。

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©ASEAN-Japan Centre   マニラ マカティ地区

ASEAN域内での乗り入れ自由化が達成された先には、完全な単一航空市場を創設する計画がある。この計画が実現すると、域内他国から域外国に就航したり、域内他国間で路線を運航したりできるようになる。

完全な単一航空市場が実現すると、航空運賃の低価格化、サービス改善など旅行者への恩恵は大きい。

フィリピンとインドネシアが批准を見送った理由は、セキュリティ上の問題に加え、競争激化で自国航空会社が影響を受けるというもの。こうした問題への対処枠組みを作り、懸念を払拭するのが、批准の促進につながるはずだ。

日本人旅行者の東南アジア人気や、東南アジアからの訪日需要の高まりを考慮すると、単一航空市場の創出で日本ー東南アジア間の路線が一気に増えることも考えられる。そうなると東南アジアがより身近になり、旅行をする機会も増えることになるだろう。

 
(text : 細谷 元)

 
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