タイ
ビジネス
見事にローカライズされた定食屋

タイに進出している大戸屋は、日本の大戸屋とちょっと違う!?

著者撮影

バンコクにはたくさんの日本料理店があります。日本から進出した店もあれば、タイで立ち上げた店もある。中には日本人ではなくタイ人が経営している日本料理店もあります。その数はトータルで2000店以上。大半がバンコクに集中しています。

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その中でも異彩を放っているのが2005年に進出した大戸屋でしょう。定食メニューでおなじみのあのチェーンです。

なぜ大戸屋かといえば、当初はタイ資本のセントラルレストラングループとの合弁で事業をスタートさせながら、2011年に全株をセントラルに売却したため、現在のタイの大戸屋は完全なるタイ資本の会社だからです。

つまり、日本の大戸屋は一切関わっていない。売却を機に直営だった店はすべてフランチャイズ方式に切り替えられました。店舗数はいま42店にまで増えていますが、すべてがフランチャイズ店です。

日本の大戸屋の手が離れてからというもの、「味が変わってしまった」「もう日本の大戸屋の味は望めない」と多くの現地日本人が嘆いていましたが、大戸屋の人気はゆるぎません。むしろ以前よりも着実にタイ人の支持を集め、地歩を固めているようにも見えます。

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店をのぞくと、客のほとんどはタイ人です。タイ、特にバンコクの日本料理店の大半が現地在住の日本人(主には駐在員やその家族)に依存している現状を考えると、大戸屋は完全にローカライズに成功しているといえるでしょう。

ではタイの大戸屋は以前とはどう違うのか。

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メニューは日本の大戸屋と同じです。一汁三菜という大戸屋の基本も変わっていません。定食メニューは変わらず、ご飯、お味噌汁、おかずや副菜で構成されています。ただ、味付けが若干、甘くなったようです。これは明らかに甘い味を好むタイ人向けの仕様でしょう。また、タイ人は比較的しっかりとした味付け(メリハリのある味付け)を好むためか、味付けも日本の大戸屋よりはやや濃くなった印象です。誤解を恐れずにいえば、やや「おこちゃまの味」っぽい。

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とはいえ、全体が醸し出す雰囲気はいまも変わらず「日本の大戸屋」です。定食は300〜400バーツ(1000円〜1300円)ほどするため、決して安い料理ではありませんが、ハレの日の食事として利用されています。日本もパスタやラーメンなど外国の食を日本流にローカライズして独自の食に仕上げました。タイの大戸屋もそれと同じ。タイに出かけた折にはタイで進化した定食料理を試してみてはいかがでしょう。

 
(text & photo : 三田村蕗子)

 
タイのビジネスシーン探訪
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