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2015.11.20 17:54
空港アクセス鉄道開業から5年

どうなる?バンコクのエアポートレールリンク

井上 毅:アジア鉄道ライター 
この著者の記事
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写真1
SAエクスプレス(著者撮影)

現在、日本で販売されているバンコクのガイドブックには、「バンコクのスワンナプーム国際空港から市内への鉄道は特急『SAエクスプレス』と各駅停車『SAシティライン』があり、前者はノンストップで市内まで運行されている」と記載されている。しかし実際には「SAエクスプレス」は2014年9月から運休中、「SAシティライン」のみが運行されている。運休理由は「車両整備」のため。空港アクセス鉄道として大きな期待をされていたエアポートレールリンクがなぜこのようなことになってしまったのか。これまでの経緯を振り返りたい。

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エアポートレールリンクが正式開業したのは2010年8月。スワンナブーム空港の開港から遅れること4年、待望の空港アクセス鉄道が開業したのである。実際には前年から一部区間で無料体験乗車ができるようになっていた。これは、「ソフトオープン」といわれるもので、試運転に乗客を乗せているようなものである。

エアポートリンク

 
正式開業時は、特急列車の「SAエクスプレス」がマッカサン駅から、各駅停車の「SAシティライン」がパヤタイ駅から、それぞれ15分間隔でスワンナブーム空港駅まで運行されていた。両列車は同じ線路の上を走るものの、スワンナブーム空港駅、マッカサン駅の乗り場は完全に分離され、あたかも別の鉄道が2路線あるような構造となっていた。マッカサン駅にはタイ国際航空などのカウンターが設けられ、同駅で荷物を預け、手ぶらで最高速度160キロの「SAエクスプレス」に乗車、僅か15分足らずで空港に到着することができた。香港、ソウルのような「シティエアターミナル」を目指したのである。

写真2
SAエクスプレスの車内(著者撮影)

しかし、開業後の「SAエクスプレス」の乗客数は惨憺たるものだった。私が乗車した時でも、乗客が1列車に10人以下ということがよくあった。理由は、料金が「SAシティライン」が45バーツであるのに対し、「SAエクスプレス」150バーツと割高であったこと。空港から市内までタクシーで400バーツ程度のなので、2人で利用するとほとんど同じ料金になってしまう。もうひとつの理由はマッカサン駅の立地の悪さ。当初は地下鉄の駅と連絡通路がなく、一旦駅を出て野良犬の間を通り、踏切と横断歩道を渡らなければ地下鉄の駅に乗り換えられない、という構造となっていた。

写真3
マッカサン駅のチェックインカウンターは当初から閑散としていた(著者撮影)

そこでエアポートレールリンクも対策を講じた。まずは料金の値下げ。期間限定で片道90バーツなどの特別料金を設定した。もうひとつは運行形態の見直し。立地の悪いマッカサン発の「SAエクスプレス」を半分に減らし、パヤタイ発の「パヤタイエクスプレス」とマッカサン発の「マッカサンエクスプレス」を交互に運行することにしたのである。パヤタイ発の特急が設定されたことで、BTS沿線からの利用は便利なったが、マッカサン発が減便されることでシティエアターミナルはより利用しにくいものとなってしまった。

加えて2012年頃から車両の整備不良のための運休が目立つようになってきた。全部で9編成ある列車のうち4編成しか運行できなくなったこともあったようである。日本では考えられないことが、新しい外国の技術をそのまま持ち込んだタイの場合、車両を製造したシーメンスとタイ国鉄の連携がうまくいかず、このような状態になってしまったようだ。結果、昨年9月から「SAエクスプレス」は全面運休となり「SAシティライン」だけが運行という状態になってしまったのである。ちなみに、現在バンコクで建設中の都市鉄道「パープルライン」は、日本の車両が導入され、保守もJR東日本が関与しているので、このような問題が発生しないことが期待されている。

写真4
SAエクスプレスの先頭車は荷物コンテナが搭載できるようになっている(著者撮影)

写真5
高架線のため見晴らしはよい(著者撮影)

現在、「SAシティライン」は昼間20分間隔、ラッシュ時15分間隔で運行されており、
旅行者の市内への足として問題なく利用することができる。スワンナブーム空港からはあまり混雑していないが、夕方のパヤタイ発は非常に混雑している。先日利用した際も満員で乗車できず一本列車を遅らせることとなった。空港への帰路に利用する際は時間の余裕をみておきたい。

写真6
閑散とした現在のマッカサン駅(著者撮影)

写真7
SAシティラインは混雑し積み残しが発生することも(著者撮影)

「SAエクスプレス」は2015年内に運行再開予定と発表されているが、今のところ具体的な再開の情報はない。大きなスーツケースを持っていてもゆったり乗車できる列車の復活は待ち遠しいところではあるが、現在の「SAシティライン」の混雑の様子を考えると、まずは「SAエクスプレス」の車両も利用して「SAシティライン」の増発をはかることが急務である。マッカサン駅周辺には、車両工場の跡地など広大な空地が広がっており、タイ国鉄の赤字を埋めるための再開発が計画されている。この再開発が進めば空港特急の始発駅としてのマッカサン駅の重要性が見直されるかもしれない。皮肉なことに、現在はマッカサン駅と地下鉄ペチャブリー駅の間には立派な連絡通路が完成し、野良犬に会うこともなくスムーズに乗り換えができるようになっている。

 

(text & photo : 井上毅)

 
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