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【旅を深めるミニ講座】究極の美を巡るシンガポール、プラナカンの旅~後編~

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photo:シンガポールミュージアム日本語ガイド

 

よりディープな旅を楽しむための予習をする「旅を深めるミニ講座」。今回は、多くの旅行者を惹きつけてやまない、マレー半島発祥の「プラナカン文化」に注目! シンガポールミュージアム日本語ガイドとして活躍中の榎澤明子さんに、その歴史について教わった前編に続いて、後編ではシンガポール生活の中で身近に感じるプラナカン文化、そしてシンガポールでの見どころについてお届けします。

※前編のおさらいはコチラ!

 

プラナカン料理は「お母さんの味」が一番?

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photo:シンガポールミュージアム日本語ガイド、STB

 

東洋と西洋、伝統とモダン、様々な文化が自然とミックスし、誇り高き独自のスタイルが育まれていったプラナカン文化。それはいまも子孫たちによって脈々と受け継がれている一方で、シンガポールの一般的な生活の中に溶け込んでいるものもある。

「日本で言う和菓子のようなお菓子(写真左)やラクサ(写真右)など、気づかないうちにプラナカンの人が食べていた料理を食べていることがよくあります。意識しなくても、特に食べ物を中心に、シンガポールの文化の中に溶け込んでいるように感じます」

 

「プラナカンの人々は自分たちの文化、家族で長く歴史のある家に住んでいることを誇りに思っている印象を受けます。コミュニティがしっかり残っているんですね」と彼らの印象を語る榎澤さん。それを象徴するエピソードも。

「プラナカン料理のレストランに行って、お店の人たちに『シンガポールで一番美味しいプラナカン料理の店はどこ?』と聞くと、大体の人が『うちのお母さんの料理だよ』と答えるんですよね。レストランは男性が経営していることが多いのですが、レストランで食べるものというより家でお母さんが作る料理と思う方が多いので、そうすると本物のプラナカン料理ってお店の人のお母さんに作ってもらわないと食べられないんだなと(笑)。シンガポール全体に言えますが、家族との繋がりをとても大事にしているのをすごく感じます」

 

プラナカンは縁起を担ぐのがお好き?

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photo:STB

 

料理以外にも生活に根付く、「縁起を担ぐ」こともプラナカン文化に多く見られるのだとか。

「いまはどの程度残っているか定かではありませんが、例えば『妊娠中はあまり針を使わない方がいい』とか、『スパイス作りに使うすり鉢とすり棒を別々にしてしまうと、家族が離ればなれになってしまう』という言い伝えや迷信が身近に残っています」

 

「また、何代も続いている家族なので、彼らは先祖を大事にすると同時に子孫繁栄もとても大切に考えます。例えば、結婚式では男子をもたらすと考えられている麒麟のモチーフの他、子宝に恵まれることを願って、多くの房や種をもつ果物やナッツ、たくさん子供を産む虫や魚などの吉祥文様が多用されています。中華系プラナカンの生活には中国の風習が色濃く残ってますが、辰年は運気が上がる年として好まれていて、出生率が上がるんです。いまは少子高齢化が進んでいますが、2年前(辰年)にも『出生率が上がった』と報道していました。プラナカン博物館には結婚式の間だけ使用されていたベッドが展示されてますが、そのベッドを備え付けるときにも、早く夫婦に子供が恵まれますようにと親戚の中から男の子、いれば辰年の男の子がベッドに寝転んで良い気を移す、というような風習もあったそうです」

 

プラナカン博物館ではそのような結婚式やお葬式の様子も再現されており、「自分もその中にスリップした気分になれる」とのことなので、ぜひ訪れた際にはご注目あれ。

 

プラナカン文化を楽しむならココ!

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カトン・アンティークハウス(左)、アヤム・ブアクルワ(右)
photo:シンガポールミュージアム日本語ガイド、STB

 

また、プラナカン博物館と合わせて行きたいのが、多くの色鮮やかなショップハウスが残されているカトン地区。実は、ご近所さんだという榎澤さんもよくカトンに買い物に行くそうですが、おすすめの楽しみ方は?

 

「カトンの食料店に行くと、店先でちまきや色のきれいなお菓子を売っています。最初は色にびっくりしますが、元々は全部自然の色で作られていますし、味も日本人好みだと思うので、ぜひ試してみてください。また、プラナカン料理のレストランも数軒あるので、お店の人(大体がプラナカンの方)に話を聞くのもいいですよね。プラナカンの代表料理でアヤム・ブアクルワという、チキンとブラックナッツを煮込んだ料理があるのですが、これはぜひ試してほしい。見た目は真っ黒なのですが、そのままでは食べられないブラックナッツの実を一旦殻から出して調理し、殻に戻してチキンと一緒に煮込むという、とても手が込んでいる料理。味噌のような日本人にはなじみのある味だと思いますよ」

 

ちなみにカトンを歩く際には、左右に並ぶショップハウスで、アーケードになっていない(お店がない)側から反対側を見ると全体の風景が楽しめるとのこと。

 

聞けば聞くほどタイムスリップして覗いてみたくなる、プラナカンの世界。ぜひ、シンガポール(またはペナン、マラッカ)を旅行するときには、実際に見て聞いて味わって、歴史深い世界に浸ってみてはどうだろう?

 

<プロフィール>
榎澤明子(えのさわ・めいこ)

夫の転勤に伴い、2010年1月よりシンガポールに在住。2010年4月よりミュージアム日本語ガイドグループに所属し、シンガポール国立博物館、アジア文明博物館、プラナカン博物館にて日本語ガイドを行っている。休日の楽しみは周辺各国への旅行とシンガポール国内のローカルフード食べ歩き。

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photo:STB

(text:Izumi Kakeya)

 

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