シンガポール
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日本はグローバル化と言えるか

グローバル化の指標「国際会議主催都市」、圧倒的首位の国は?

Event Venue Spaces - Flower Field Hall 4
©Gardens by the Bay

企業も国家も、そして私たち個人も、もちろん全員とは言わないが、現代の「グローバル化」というトレンドにこれから対応していくことを求められている。

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そして、この事実は否定するのがなかなかに難しいということも、徐々に認識され始めているだろう。

では、だとしたとき、はたしてどのような状態にまでなれば、「われわれはグローバル化した」と言ってよいのだろうか。あえて逆の言い方をしてみるなら、いまどのような状態だから、日本はグローバル化に対応できていないということになってしまうのだろうか。
グローバル度をしめす指標「MICE」
BCA Gallery
©Singapore Tourism Board

「グローバル化」の達成の度合いをしめす、ひとつ参考になる指標がある。「国際会議統計(International Meetings Statics)」と呼ばれるもので、「日本政府観光局(JNTO)」もこれに基づいた資料を独自に作成し、公開する国際的に信頼が置かれている指標だ。この国際会議統計は、「国際団体連合 (Union of International Associations)」、通称 UIAが、いわゆる「MICE」イベントの数を調査したもの。MICEとは、報奨旅行、会議、展示会のこと。つまり、世界中の企業が集まる「ビジネスのハブ」の度合いを示している。

Singapore City Gallery
©Singapore Tourism Board

その2013年の結果をまとめた最新の調査が、昨年(2014年)6月に発表された。この調査で、174の国と地域にある1465都市の中で首位に立ったのが「シンガポール」。一年間でのイベントの回数は「994回」だった。しかも、同都市の首位は昨年でなんと7年連続。

国別でも、首位はシンガポール。2004年は、アメリカが「1713回」で圧倒的首位だった。当時、シンガポールは「172回」で22位。ちなみに、日本は「285回」で13位。それから急激に順位を上げ、2011年にアメリカを追い抜き、今でもその地位を返上していない。

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主な都市別の「MICE」イベントの数(出典:UIAのウェブサイト)

 
他の追随を許さないシンガポールの策
Event Venue Spaces - The Meadow 2
©Gardens by the Bay

みなさんは、日本が何位だと予想するだろうか。最新の2013年は、「588回」で国別で「4位」。前年の2012年は「731回」で「2位」だったが、143回減らし順位を下げた。シンガポールに続いて、2位は先述の「アメリカ」、3位は「韓国」、5位は「ベルギー」だった。

都市別でも見てみよう。2位に558回の差を付け圧倒的首位だったシンガポールに続いて、2位は「ブリュッセル(ベルギー)」、3位は「ウィーン(オーストリア)」、4位は「ソウル(韓国)」。日本勢の最高位は東京で「5位」。前年から3回増やし、順位を一つ上げた。

シンガポールの政府観光局によると、同都市は「国際会議・コンベンション協会(International Congress and Convention Assosiation)」、通称 ICCAが発表した、2013年版の「世界コンベンション都市番付」でも、アジアで12年連続の首位となった。

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主な国別の「MICE」イベントの数(出典:日本政府観光局(JNTO)国際統計)

この都市は、アジアビジネスのハブとしての地位を、東京や香港など、他のアジアの先進都市に譲る気はないようだ。同政府観光局は、このMICEの事業に関する新たなロードマップを策定し、発表している。

それによると、日本人観光客にも人気のホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」が立地するマリーナベイ地区からリゾート地区セントーサ島など、主要なエリア一帯を「Wi-Fi」でカバーする。また、世界への文化の発信やMICEのための人材育成を強化する計画もある。

背景には、外貨を獲得したい意図がある。同政府観光局によると、2013年のシンガポール来訪者1560万人のうち、MICE旅行者は350万人。同都市の全観光収入235億シンガポールドル(Sドル)のうち、MICE旅行者は55億Sドル。支出は通常の観光客の1.7~1.9倍だ。

さらにアジアでは、隣国で、都市別ランキング18位に首都クアラルンプールがランクインしているマレーシアや、中国や韓国など、各国や都市がMICE事業への投資を拡大している。その追随を許したくない考えだ。

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マリーナベイ地区の夜景(写真:筆者が撮影)

 
2020年東京オリンピックに向けた日本の動き

いまの地位も盤石とは言い切れない日本も、MICE事業の強化に乗り出している。観光庁は「2030年にはアジアNo.1の国際会議開催国として不動の地位を築く」という政府目標のもと、「グローバルMICE強化都市」の募集を開始した。

2013年6月に選定した、東京、横浜、京都、神戸、福岡、大阪、名古屋の7都市に、新たに4都市程度を加える。選ばれた都市には、国が都市の調査分析やアドバイザー派遣、プロモーション支援などを実施する。

また、MICE事業行う大手2団体が合併し、新たに「日本コンベンション協会」を設立。専門委員会などを通じて、MICE産業の発展と活性化、国際競争力の強化を推進していくことがそのねらい。

同協会では、2020年に開催される「東京オリンピック・パラリンピック」を世界最大のMICEと位置づけている。世界中の日本に対する関心が高まる大きな節目で、国際会議主催都市としての存在感を高めていけるだろうか。

 

(text : 岡 徳之 )

 

参考:日本政府観光局(JNTO)国際統計

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