ラオス
観光
鉄道ライターが教える!

国際列車で国境を越える!タイからラオスへの旅

写真1_
第一メコン橋を走行する「ローカル国際列車」

鉄道の趣味のひとつに「乗りつぶし」というのがある。ある国や地域の鉄道にすべて乗ることを目的としているもので、日本の鉄道の「乗りつぶし」をしている人はたくさんいる。では、アジアで最も「乗りつぶし」が簡単な国はどこか。

本文を読む


答えは2009年に鉄道が開業したラオス。タイの国境からたった1駅がラオス唯一の鉄道である。列車は僅か1日2往復、ローカルムード満点の国際列車に乗って、ラオスの鉄道全線完乗を目指そう。

 
ラオスへの国際列車の出発駅は、タイ東北地方の国境の街ノーンカーイ。ノーンカーイへはウドンタニまで飛行機を使いそこから車で移動する方法もあるが、できればバンコクから夜行列車を利用したい。列車で約11時間、朝にはノーンカーイ駅に到着する。

写真2
ノーンカーイから対岸のラオスを眺める

ノーンカーイは、メコン川を挟んでラオスと向き合っており、国境の街として発展してきた。1994年にそれまでの渡船に替わり第一メコン橋(タイ=ラオス友好橋)が開通、バスやトラックで移動できるようになったが、引き続き入国審査はノーンカーイで行われており、国境の雰囲気は変わらない。ノーンカーイ駅は、以前は街の中心にあったが、鉄道がラオスへ路線が延長されるにあたり街外れに移転した。国際列車の発車まで時間があれば、ノーンカーイ駅前からトゥクトゥクに乗り、国境市場で買い物をしたり、メコンの川辺でお茶をしながら川越しにラオスの村を眺めるのもよいだろう。

写真3
国際列車とイミグレーション窓口

 
さて、ローカル国際列車の旅を始めよう。国際列車はノーンカーイ駅の専用のホームから出発することになっており、出発時刻近くになるとイミグレーションの窓口が開く。ここで出国手続きが済んだ乗客から列車に乗り込む。列車は2両編成の日本製ディーゼルカーだ。

写真4
列車には「国際列車」との表示が

鐘の合図で走りだした列車は、暫くすると路面電車のように道路の真ん中を走行する。ここは第一メコン橋の有料道路の上で、普段は自動車が走行しているが、列車が走る間のみ車はストップされ鉄道専用橋となる。この橋は開通時からレールが敷設されていたものの、前後の鉄道区間が完成していなかったため列車が走っていなかった。橋の開通後15年を過ぎ、ようやく鉄道橋としての役割を果たすようになった。

写真5
道路と合流、車は通行停止

列車はメコン川の上を走行していく。中間点にタイ、ラオス両国の国旗が掲げてあり、ここからがラオス領になる。橋の上は、タイ、ラオス双方から中間地点近くまで徒歩で見学することが可能であるが、国境を通過することはできないようになっている。

写真6
タイ、ラオス国境を通過

 
橋を渡りいよいよラオスに上陸。再び道路と別れた普通の線路となり、ラオス唯一の踏切を通過すると、終点、ターナレーン駅。僅か15分ほどで国際列車の旅は終わり、これでラオスのすべての鉄道に乗車したこととなる。メデタシメデタシ。ターナレーン駅にも当然、イミグレーションがありラオス入国の手続きをすることになる。駅前にはビエンチャンへの乗合バンが待機しているが、鉄道利用者は今のところ観光客が大半なので、乗合バンも強気の値段設定だ。駅周辺は全く店もない寂しいところだが、少し離れたところには、神、仏の巨大な像が展示されている謎の名所「ブッダパーク」もある。

写真7
いよいよラオス上陸

写真8
ラオス唯一の踏切

写真9
不思議なテーマパーク「ブッダパーク」

今のターナレーン駅は、ビエンチャンからも離れており中途半端なところにある。当初は、ターナレーンからビエンチャンへの線路の延長が計画されていたが、その後、中国による雲南~ラオス~タイの高速鉄道が計画され、路線が重複するこの区間の延長は、一旦棚上げされている。一方、ターナレーン駅の貨物用設備の建設は継続されているようで、将来は貨物列車が走ることが期待されている。ラオスは内陸の国、モノを輸出するにはどうしても他の国を通過する必要がある。もしラオスとタイの間で保税の仕組みが整備され、ターナレーン駅からの貨物列車がタイの港、レムチャバン港まで直接走ることになれば、ラオスは世界と繋がることができる。その時、僅か1駅ではあるが、ラオス国内に鉄道の駅があることは重要な意味を持つことになり、この国境鉄道も改めて注目を集めることになるだろう。

写真10
ターナレーン駅

 

(text & photo : 井上毅)

 
バンコクから見る、東南アジア鉄道の楽しみ方
その他の記事はこちら>

何をむ?

国名・都市名、ジャンルを選ぶと、読みたい記事を絞りこみできます

RECOMMEND COLUMN
連載コラム

RECOMMEND
COLUMN
連載コラム